3,金屋の集落から金屋の石仏へ

                     

海石榴市観音堂を後に県道(旧伊勢街道)にもどると、

 

道は、自然なカーブを描きながら金屋の集落を進んで

 

いきます。立ち並ぶ民家は、古い家、真新しい家と

 

統一のとれない様相です。一部の観光地区を除き、

 

これが日本の街並みの現在でしょう。しかし、歴史を

 

沈めたかのごとき静けさは、「街」のあり方を考える

 

 いとまを与えてくれるでしょう。

 

いまから、3,40年前までは、この集落にも、この道を中心に 魚屋さん、文房具屋さん、

 

駄菓子屋さん、八百屋さん、道具屋さん、呉服屋さん、炭屋さん、飲み屋さん、鍛冶屋さん、

 

そして、発動機屋さんまでありました。そして、多くが百姓を営んでいました。仕事が街を

 

作り、生活を支え、街並みをつくってきたのです。そして、そこには、そこはかとない統一

 

―バランスがあったように思います。今は?と問われれば、…この集落に住み、この村に仕事を

 

持つ家は、ほんの数軒にすぎません。専業農家の二軒と名産の三輪

 

そうめんを作る二軒とほか数軒にすぎません。多くの日本の街と

 

同じように大半が眠るだけのすみかとなっていのです。 

 

出雲、三輪族の末裔たる?人たちの良き伝統、暮らしが健やかなる

 

仕事とともに取り戻せるのを祈ってください。

 

             海石榴市観音堂から県道を100メートルも行くと右手に「これより

 

ちかみち 三輪大明神 なら」と彫り跡も滑らかになった大きな石の

 

道標があります。その角を右(北)に曲がって、150メートルも

 

いくと「金屋の石仏」があります。 そして、このあたりから、

 

文字通りの「山の辺の道」が始まります。

              

 現在、石仏は鉄筋コンクリートの立派なほこらに収容されて

 

います。重要文化財に指定された関係上、震度7にも耐える

 

建物だそうです。鉄の格子の間から拝見すると、2メートルを

 

越える立派な浮き彫り彫刻の石仏が2体納められています。

 

右が弥勒菩薩、左が釈迦如来だと伝えられています。 

 

流麗、湧渾、端正なお姿は、まさしく平安初期―弘仁期の

 

ものだという人もいます。また、鎌倉期のものという人もいます。

 

なにはともあれ、このような石仏が、今どうしてここに

 

   あるのか?不思議でなりません。20年ほど前までは、

 

100メートルほど三輪山の山懐に入ったところにあり

 

ました。朽ち果てたほこらと覆いかぶさる緑のなかで妙に

 

落ち着いて、子どもであった私たちのにも親しげであった

 

ように思います。 そのもっと以前は、三輪山の山中に

 

あり、発見した村人が力を合わせ、ここまでお連れした

 

のだと聞いています。 なぜ山の中に、このように大

 

きく、重く、立派なものが と。・・・この谷には,この山には、なにがあり、なにが営まれ

 

ていたのか?と不可思議さが広がります。このあたりは、弥勒谷と呼ばれています。また、

 

石仏は「みろくさん」と村人から親しく呼び慣わされ、花香の絶えることがありません。

 

 

    金屋の石仏をすぎ、50メートルもいくと一度後ろを振り返ってださい。大きな空間が

 

広がっています。右手に天理教敷島大教

 

会の雄大な建物が、正面には、遠く多武

 

峰の山々がかすんでいます。

 

鳥たちの飛翔も目にする事ができるでし

 

ょう。しかし、その下で、多武峰の麓で、

 

近年 産廃処理が大規模に進んでいます。

 

我々現代に住む人間の生活と欲望の残骸が、

 

山肌に隠されながら深い眠りにつこうとしています。この辺りのあちこちに数々の遺跡を残

 

した古の人々と、現在我々が多武峰の麓でやろうとしていることの対比は、単に歴史の流れ

 

だけのせいにすることのできない、我々人間の生活や精神の習慣の大きな変化を物語ってい

 

るように思われます。

  

                                この辺りまで、桜井駅を出発してから

 

一時間ほどたつのではないでしょうか?

 

そろそろと思う方は、すぐそこの

 

『やきものの うめだ』

 

一休みしてください。

 

3坪ほどの小さな手作りの小屋です。

 

いい焼き物でいっぱい?

 

        おいしいお茶もでるかな。

 

なにはともあれ、

 

良きものと よき語らいを!」 

 

ご遠慮なく!

 

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