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「牛頭天王とスサノオ」の項目で考えたように、現在のスサノオ系神社が、明治期の神仏分離以前に牛頭天王社であったケースはかなりの割合(本稿筆者の私的印象としては60%を大幅に超えるかと)であったと見られます。これは低く見積もった割合で、以下にあげる八柱神社や八王子神社のケースを考えに入れると牛頭天王信仰の社であった神社はさらに多くなるでしょう。
八柱神社はともかくとして、スサノオ系神社や八王子神社は日本各地に今も数多く存在しており、その背後にあった牛頭天王信仰の広がりを考える時、見過ごすことはできない神社であるのは疑いようの無いことです。 |
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八柱神社や八王子神社はその名の通り八柱の神々を祭祀しますが、必ずしもその祭神が統一されているわけではありません。例えば、奈良県北東部の東山中(ひがしさんちゅう)と呼ばれる地域には八柱神社が固まっており、その多くが宮中八神を祀っているというように地域的な特徴もあります。ですが、八柱神社や八王子神社については、割合から考えると五男三女神や八柱御子神を祀るケースが非常に多いように見受けられます。五男三女神も八柱御子神もどちらもがスサノオに、さらにさかのぼって牛頭天王に繋がっていきます。
神仏分離の時、スサノオに祀り替えられたのは牛頭天王ですが、何パターンかの八柱の神々に祀り替えられたのは牛頭天王の子である八王子神でした。八柱の神々が一まとめに祭祀されるケースは多々あり、その内訳を下記に備忘録的にまとめてみましょう。 |
地図右上の[ ]をクリックすると「杵築神社・スサノオ系神社:奈良」が大きく開きます
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●八柱御子神● スサノオの子とされる八神
五十猛神 八島士奴美神 大年神 大屋津比売神 抓津比売神 多紀理毘売神 狭依毘売神 多岐都比売神
●五男三女神●
スサノオとアマテラスの誓約で生まれた八神
多紀理毘売命 市寸島比売命 多岐都比売命 天忍穗耳神 天津日子根神 活津日子根神 天菩比神 熊野久須毘神
八柱御子神および五男三女神はスサノオに関わることから、 元牛頭天王社であった神社では ほとんどがこの2つのパターンの祭祀となります。
●宮中八神●
古来、宮中の八神殿にて天皇守護のため祀られた八神
高御産霊神 神御産霊神 生産霊神 足産霊神 魂積産霊神 大宮売神 御食津神 事代主神
スサノオとのかかわりは強くはありません。 また、事代主神のみが国津神であるのが興味深いところです。
 
●八王子神●
牛頭天王と婆梨采女の間に生まれた八柱の神々
太歳神 総光天王 大将軍 魔王天王 大陰神 倶摩羅天王 歳刑神 得達神天王 歳破神 良侍天王 歳殺神 侍神相天王 黄幡神 宅相天王 豹尾神 蛇毒気神
八王子神は八将神と呼ばれることもあります。
その組み合わせは複数の異説があり、
上記は代表的な組み合わせとなります。
名前からしても陰陽道の影響があることは想像に難くないでしょう。
特徴的な名の「蛇毒気神」には次のような説話が伝わります。
旅の途中だった牛頭天王とその一行の道を阻む者が現れました。
牛頭天王がその素性を聞いたところ、
その者は「自分は、牛頭天王の7王子が生まれた後、その胞衣から産まれた者だ。」と言い、
牛頭天王は蛇毒気神を8番目の子と認めました。
蛇毒気神は、十一面観音の姿を持つ美しい姫神です。 |
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