牛頭天王とスサノオU
スサノオ系神社
●牛頭神社●

スサノオを主祭神とする神社についてを「スサノオ系神社」としてお話ししましょう。スサノ系神社は、牛頭天王社であったものがスサノオ系神社に転じたケースがかなりあります。牛頭天王社は江戸期以前の日本の広範囲に相当数存在しました。



スサノオを主祭神とする神社はもちろん様々にあるわけですが、それらの中でも牛頭天王社から転じたスサノオ系神社は、その名として下記のような神社が知られています。もちろん、これらがすべてではありませんが。

杵築神社
弥栄神社
八坂神社
八阪神社
祇園神社
津島神社
広峰神社
須賀神社
八雲神社
進雄神社
素盞嗚神社
須佐男神社
須佐之男神社
天皇神社
牛頭天王社


地図右上の[ ]をクリックすると「杵築神社・スサノオ系神社:奈良」が大きく開きます

杵築神社についてはその名前が気にかかるところです。というのは、かの島根県の「出雲大社」について、ここは江戸期以前まで「杵築大社:きつきのおおやしろ」と呼ばれていました。そして平安期から江戸期までのかなり長い期間、その本殿にスサノオを祀っていたとのことです。であれば牛頭天王社がスサノオを祀る神社へ改称される時「八雲」や「須賀」など出雲に関係する名が用いられたことから類推して、意識して「杵築神社」の名が用いられた可能性が考えられるでしょう。

不思議なことに、例えば奈良県では盆地中央部に杵築神社が二十数社かたまっています(見える距離にあるという程ではありませんが)。盆地中央部ですから盆地内の標高としては低い位置になり、大和川やその支流に近い場所にあることがいえます。大阪府柏原市や大阪府八尾市にも数社の杵築神社があることを考えると、大和川水系ということが共通する特徴と言えなくもありません。牛頭天王は水神とも考えられており、その関係で、奈良盆地から大阪へ流れ出る大和川の治水祈願に特化した牛頭天王社が杵築神社に転じたかとも想像しますが、それも想像の域を出ることはありません。



本稿に関連する神社として、各地にある八柱神社や八王子神社も牛頭天王に繋がるケースが多々あります。

【Link:八神】

スサノオ系神社についても八王子神社についても日本各地に数多く存在しており、その背後にあった牛頭天王信仰の広がりを見て取ることができます。

今まであげてきた牛頭天王社の他にスサノオを祀る神社は熊野神社の系統、氷川神社の系統その他があります。しかしながら今は同じようにスサノオを祭神とするといっても、元をたどれば熊野は熊野、氷川は氷川、そして牛頭天王というようにそれらは系統を異にする信仰であったと考えられます。

前述のように、明治期の神仏分離・廃仏毀釈によって多くの神社が合祀・統廃合され、寺院に関しては廃絶された所が多かったとも聞きます。この時期に神社での仏教式行事の廃止、祇園・牛頭天王などの仏教系の名前の廃止、そして仏教系の尊格である牛頭天王への祭祀までもが廃止されました。牛頭天王を祀る社はその多くが、素盞嗚神社・八雲神社・須賀神社・八坂神社などスサノオ系神社へと名を変えられ、もしくは地名を神社名としたり、牛頭天王を祀る以前の名に復されていきました。



京都の八坂神社にしてからが、江戸期までは牛頭天王を祀る「祇園感神院」という寺院でしたが、明治以降その地名をもって「八坂神社」と称し牛頭天王の痕跡は消されました。

ともあれ、スサノオ系神社も八王子神社もその多くは牛頭天王系統であり、元々が神仏習合の神社だったということになります。
●八坂神社(京都府京都市)●





牛頭天王とスサノオT
牛頭天王とスサノオV
八 神




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