厳格にルールを守れば事故は防げるのか?



 先日、市内をクルマで運転中にヒヤッとした事がありました。その事を書きます。

まずは状況を説明させてください

 僕の住んでいるのは田舎の規模の大きくない“市”です。
 駅近くの片側1車線の国道を走っていて信号の無い交差点に差し掛かりました。 そこは右側から ギリギリ2車線分くらいの道、左側は2階建の店舗と7階くらいのマンションの二つの建物の間から1.5車線分くらいの道があり少しずれて向かい合っています。 歩行者、自転車が渡られたり、抜け道にするクルマがあったりと普段から注意をしている場所です。
 僕がその場所に近づくと左の建物の間の道から高校生と思しき男子がママチャリで走って来るのを感じました。「『見えた』と書くべきだ」と言われる方がいらっしゃるかもしれませんが、僕の感覚を表現すると“感じた”です。 ママチャリで普通に真っ直ぐに走るくらいのスピードですから、「そのまま、走ってきたら 轢いてしまう」と感じたので(ここも「感じた」です)、ブレーキを踏んで、センターラインに寄せました。 高校生は左折して、つまり僕が進んでいた方向へ、振り向きもせずに走って行きました。彼は僕が危険を感じ回避行動を取っていた事を知りもしなかったでしょう。

 その時 僕はブレーキをかけましたが それは飛び出してきた人の少し前、でも絶対に轢かないで止まれる程度です。「なんで最大限のフルブレーキじゃないんだ。」と言われる方がいらっしゃる事でしょう。
 その時は後続車も無く フルブレーキは可能でした。でも、大型車が車間を詰めて迫っていたとしたら フルブレーキなんか掛けたら僕が追突されていたでしょう。
 それに 出てきた本人が交差点に入った時、クルマが近づいていたのを知れば、次回からは気をつけるかも知れないと思うからです。 こちらが遠くで止まってしまうと当人はクルマが近付いていた事を知りもしないでしょう。事実、彼は振り向きもせずに行ってしまいました。
 最悪の場合、少しでも衝突までの時間を稼ぐ為にセンターラインに寄せましたが、対向車があったのでそれ以上は避けられませんでした。対向車のドライバーさんは驚かれたと思いますが、そう言った事情があったのです。ごめんなさい。


僕に何が出来たでしょう

 高校生は車道には はみ出しては来なかったので結果的には回避行動を取らなくても事故にはならなかったでしょう。しかし、それは結果論です。 もし、高校生の行く先に障害物があったら 彼は確認もせずに車道にはみ出していたかも知れません。車道に倒れてきたかもしれません。田舎の道路事情なんてそんなもんです。歩道の幅が充分に取られている場所なんてほとんど有りません。
 避ける為に僕が対向車線に出れば正面衝突です。相手のドライバーさんにご迷惑をかけます。飛び出してきたとは言え「自転車」と事故を起こせばまるっきり僕の責任です。


クラクションは鳴らしませんでした

 鳴らしているほどの時間は無かったと言うのが本当のところです。また、「不用意に鳴らしてはいけない」と言うのも道交法の求める所です。 鳴らしていれば彼は自分の近くまでクルマが来ていた事を知ったかも知れません。知ったとしても、気に止めなかったかも知れませんが……
 それに、気付かせる為にクラクションを鳴らし続ければ僕が罰せられたかも知れません。

 《追いついて彼の前に回って幅寄せして止めて注意する。》いや~、それはもう煽り運転です。


他人がどんなつもりで自転車に乗っているかなんて判らない

 自転車の高校生は「自分は車道に出なかったから良いだろう。」と言う事でしょう。でも、そんな事、他人が判るわけないじゃないですか? 「曲がるつもり」なのか「飛び出して来るつもり」なのかって…… 「飛び出して来ない」と言う保証はありません。
 だから、減速したり止まったりするんですけど、そうすると今度は後ろから「何で止まるんだ」と“ビービー”鳴らされてしまいます。追突されてしまうかも知れません。下手すると『訳もなく急ブレーキをかけた』と検挙されるかも知れません。
 田舎では歩道がなくて車道の外側(路側帯)もほとんど無い様な道路がまだまだあります。その様な道の交差点で自転車が左側から走って……それもスピードを落とさずに走って来たらどうします。もちろん信号は自分の方が青です。
 結果として彼らは左折して、つまりは車道には出ないのでクルマを止めなくても問題にはならないんですけど……


クルマを運転していて左から減速もせずに……

走って来る自転車を「どんなつもりか?」なんて観察しているヒマなんてありません。例え「自殺をするつもりで飛び出して来たとしても避けろ」と言うのが今の道交法です。
 自分が追突されて死ぬ事になったとしても……避けなければなりません。いえ、道交法はそう言うことを想定していません。 でも、厳格に道交法を守ろうとするとそういう事になります。その裏にはもっと多くの事が絡んでいると総合的に判断しなきゃいけないのに……
 指導する立場の人ですら、個々の事柄についてのみ厳格に判断すればそれで事故は防げると思っていらっしゃる様ですね。複数の事情を考慮すると回避は不可能な時があるかも知れないと思うのです。


かと言って警察はその様な人たちに……

積極的に注意しようとはしません。検挙しなくても一言、ドライバーからどう見えているかを伝えて貰えば次からは注意してくれるかも知れないのに……
 以前、軽い追突事故を目撃して、「必要があれば事情を説明しよう」とその場に居たのですが、警察の“調べ”は随分あっさりとしたものの様でしたね。話を聞かれる事はありませんでした。


大型車にせっつかれていたら僕は無事でいられたか?

 後続車のドライバーが十分な車間を取ってくれていれば問題ありません。しかし、実際にはそうはなっていない事が多いですよね。警察も積極的に取り締まってはくれていないですよね。事故になって初めて問題にされるだけでショ。
 今回、僕の直後にせっつくタイプのドライバーがいなかったのは“たまたま”です。もし、大型車が直後に迫っていたら、僕は追突されて対向車線に押し出され衝突して死んでいたかも知れません。 ドライブレコーダーを付けていなければ僕が回避行動のために急ブレーキをかけたと証明する事も出来ないかもしれません。 それでも自転車の彼に責任は無かったと言わなければいけないのでしょうか?


交通安全の教育の仕方も問題です

 「自転車の彼は規則を守らなかったか?」と言うと『それ程の事はしていない』と言えるでしょう。せいぜい、「一時停止をしなかった」と言う程度です。それは彼自身の問題だと言われればそれまでです。彼らは「そんなの『自己責任』だ」と言う事でしょう。
 しかしです。周りの人間はそれを受けて最悪の事態を避けるべく行動しているのです。その為には自身の身を危険に晒していたかも知れないのです。
 言っときますけど「自己責任」は相手を黙らせる魔法の言葉ではありませんからね!!。彼を轢いてしまって僕が免許取り消しを喰らったとしたら彼はどんな責任を取ってくれるでしょう? “母を病院に送り迎えする時”などクルマに乗れなくなると凄く困ります。彼はタクシー代出してくれますかね?  いや、“死んでしまった相手”に請求書出しても きっと何にもならないでしょうね。親御さんからも「なんで私たちが請求されるんだ!!」と逆に言われてしまうだけでしょうしネ。 ねぇ、そうなると“自己責任”では済まないでショ。
 ところが学校の安全教育は「規則を守りなさい。守っていないのを見つけたら罰を与えます。」の一辺倒でしかありません。それでは『見つかったら罰を与えられるのなら 見つからなければいい。』と言う考えに行き着いてしまうかもしれません。 規則を守らなかった結果 如何なるかを実際の事例を題材に考えさせておく事が教育だと思いますけどね。


こっちは意図を持ってスピード出さないのに……

「何で、はやく走らないんだ。」と言うドライバーは大勢います。
 僕の家のある住宅地への進入路は交差点を右折して100m位なので 右折後は強い加速はしません。僕だってしようと思えば出来るんですよ。でも今度は、進入路の直前で急減速しないといけなくなります。いや、出来ますよ。でも それをすると後続車に追突されるでしょ。「そんな所で急に止まるなんて思わなかった」って………
 「僕はこの先で曲がるので注意してくださいね」という意味で加速しないのに、「早く行け、この下手クソ。」と せっつく人の多い事。僕が安全確認の為にスピードを落としたら対向車線にはみ出してまで抜いて行きます。大して代わり映えしないのにネ。「それを考える程の余裕も無いドライバーなんだろう。: - | 」と思うコトにしていますが……
 クルマの運転って無言の会話ですよね。「あっ、良かったら道を譲りますよ」「ごめんなさい。そこまで行けた方がスムースに抜けられると思うのでちょっと待ってください」って……
それの出来ない人の多くなった事…… (アァ 自動運転のクルマが出来るようになるのだろうか?)


道交法は『みんなが規則を守っている』と言う事を前提にしています

 いえ、それしか考えに入れていません。歩行者や自転車が「自分たちは保護されているんだ。何をしても罰せられるのは相手だ。」と考えて規則を守らない事は考えていません。 他にも自分の前の車間距離は取ることが出来ても、後ろの車間距離は自分ではどうしようもありません。
 「全ての人が厳格に規則を守っている事」を前提にすれば「規則を厳格に守ってさえいれば事故は起きない」と言えるでしょう。しかし、現実はそうなっていないですよね。注意する事さえしない。傍若無人な人たちに抗議することさえ許されない規則になっている。 その様な中で「規則を厳格に守ってクルマを運転していれば事故は起きない」と言う考えは無理があると言わざるを得ないんじゃないでしょうか?



2020/09/23
2021/01/09 小修正



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