覚えているからと言って思い出せる訳ではないのだと思います


 学校と言われるところでは「これを覚えなさい。」と言うのが教育だと思われている様です。学校と言わず社会全体にそのような傾向にあると思います。
 それは人々の根底に「覚えていれば思い出すことが出来る。」という考えがあるからでしょう。しかし、本当にそうでしょうか?
 例えばテレビのクイズ番組で出題の時には「えーと、えーと。」となって答えられない。しかし、答えを聞いてみると「なんだ。そうだ、そうだった。」と なることがあります。そう言えるのは、答えを覚えていなかったのではなく、「問題を聞いても思い出せなかった。」からなのだと思うのです。


答えを聞いて「あぁ、そうだった。」と言えるのは

それが正しい答えだと確実に覚えていた証拠です。覚えていなければ「あぁ、そうだった。」とは言えないのです。
 何故 必要な時に思い出せなかったかと言うと 脳の中の“覚える回路”と“思い出す回路”は別物で、覚えているコトがそれが役立つ時に思い出せるとは限らないからだと思います。
 「今、〇〇について思い出しなさい。」と言われて思い出すのではなくて、何かのキーワード、あるいは見たものからそれに関係ありそうなものをズルズルと芋づる式に連想して思い出すことが大事なのだと思うのです。


学校のテストでは

 「〇〇について答えなさい」と出題されます。何かについて覚えているかどうかをテストするにはそうするしかないですよね。しかしです、そんな方法で思い出す能力なんて社会に出ても役には立たないのです。
 社会に出て「あなたの仕事はコレコレです。よく覚えておきなさい。」と言うのは通常業務です。出来て当たり前です。しかし、職業人として大事なのは「いつもと違うことが起きた時にいかに対処できるか?」です。
 いつもと違うことが起きている時、漫然といつも通りの業務を続けていてはいけないのです。他人は誰も「今、問題が起きてますよ。」なんて言ってくれません。自分自身で気が付かなければいけないのです。そのためには現在の状況から過去に起きた事を自主的に思い出す必要があります。
 過去の経験から思い出してトラブルを事前に察知する。問題が起きたらそれを治めるための過去の行動を思い出す。そうです。思い出す事が大事なんです。それも“自主的に”です。上司は「あれについて思い出しなさい。」なんて いちいち言ってくれません。言われている様では役にたつ人間だとは思ってもらえません。


新たな物事を始めるときにも

“思い出す回路”は役に立ってくれるのです。新たな事を始める時には“直接、参考にする過去”と言うものはありません。しかし、思い出す回路を鍛えておけば、過去の経験からよく似た事、関連ありそうな事が思い出されて役に立ってくれるかもしれません。また、成功ばかりを想定しないで、新たな試みには問題が起こるものだと事前に用意しておく事が出来るかもしれません。


何かの大発明をした人も

「今、これについて思い出しなさい。そうすれば成功できますよ。」なんて誰からも言われなかったと思います。大発明と言っても、既存の知識の寄せ集めで発明された物も結構あるのです。
 成功された人は それまでに見たこと、覚えていたことを何かをきっかけに思い出して、組み合わせて、発想を飛ばして大発明に結び付けられたのだと思います。思い出す回路と発想する回路には共通するものがあるかもしれませんね。


覚える時に「とにかく覚えなければ」と

良く理解しないまま覚えても意味がないのだと思います
 覚えるべき事は 「良く理解して」、「整理して」覚えておかないとそれを引き出すための関係ありそうな事と繋がりがないから、思い出せないのでしょう。逆に物事をよく理解した上で覚えておけば 目の前の出来事から思いがけない事が思い出されて役に立ってくれるかしれません。とにかくモノを覚える時はよく理解しないまま ゴチャ混ぜで覚えても意味がないのだと思います。


“思い出すための脳神経の回路”を鍛えないといけないのです

 覚える回路を鍛えたところでそれを思い出す回路を鍛えなければその“覚えたこと”は役に立たせる事が出来ないのだと思います。脳の神経の繋がりとはそう言うものだと僕は理解しています(間違っていたらゴメンナサイ)。
 どうすれば思い出す能力を鍛えられるでしょう。“覚えること”と違って「これが正解だ。」と言えるものは無いと思います。「あれは何だったかな。思い出せないな……」と言う時には諦めずに極力思い出そうと努力することくらいでしょうか?
 「何だったかな。」と思えるのは、覚えていることに何か引っかかりがあるからでしょう。完全には思い出せなくてもその端っこに引っかかるから「何だったかな。」となるのだと思います。その時に「まあいいや。」と思い出そうとする事を止めようとせずに極力思い出す様にしましょう。
 頭の中だけで思い出そうとせず、本、メモ、今ならインターネットを駆使して引っかかりを解消しましょう。それが思い出す脳の神経回路を鍛えるとこになると思います。



2017/08/21



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