2006年 明日香文明会長のお言葉   

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2月
 九州博多の聖福寺に仙崖という風変わりな禅僧がいた。
ある家から新築落成の祝に招かれた。その家の主人が画仙紙を持ってきて「和尚さん、何か新築に因縁のある目出度いことを書いて頂きたいのですが」と頼んだ。仙崖和尚はよしよしとばかり筆を取り、サラサラと無造作に書き始められた。 主人はじめ沢山の来客がどんな名句が書かれるであろうかと目を皿のようにしていると、なんと
「ぐるりっと家をとりまく貧乏神」 と一気に書いてしまった。
これを見た主人は心中に不平不満がみなぎった。来客達も何という不吉な文句かと不穏な空気が部屋にただよった。ところが当の仙崖和尚は一向に気にしない様子であった。そして煙草を一服吸いながら、次の文句を考えている様子であったが、ようやく文句が考え出されたとみえて、
「七福神は外へでられず」 と下の句をつけ加えられた。
これを見て主人の腹立ち顔は一気に晴れ晴れとし、「こんな目出度い御祝い語はありませんぞ」 と来客たちもニコニコの七福神顔に変わってしまった。

3月

ランナーよ疲れを取ろう。肉体疲労も精神疲労も体によくない。その上に、自分は大丈夫と思っていても実は疲れが残っている「隠れ疲労」も存在している、「隠れ疲労」が命を蝕むことだってある。疲労は「痛み」「発熱」と並ぶ体の三大アラームなのだ。
疲労の原因は筋肉の酷使、不眠、ストレスだが、ランナーは主に筋肉の使いすぎだ。以前は筋肉に乳酸が増えると疲労がたまる「乳酸悪玉説」が唱えられたが、現在では「TGF-β」が関係しているとされている。体が疲労するとこの物質が出る。しかし通常は神経伝達物質「セロトニン」が分泌され、この物質は減少する。だが疲労が長引くとこの物質は蓄積され脳に異常を伝え続ける。これが「疲労感」として表れる。活性酸素により受けたダメージの修復がうまく行われないと、細胞そのものの機能が低下し、ダメージが増大する悪循環から細胞死をきたすこともある。
こうなるとひどい老化現象を起こしてしまう。疲労感を残してはいけない。


4月
菊池寛の名作「恩讐の彼方に」の主人公である僧・禅海が完成した「青の洞門」は大分県の観光名所だ。江戸時代に旗本屋敷の市九郎は、主人の妾お弓密通し主人を殺し、お弓と一緒に逃げた。木曽の山中で山賊となり旅人を襲い悪の限りを尽くした。しかしふと自分の罪業の深さに気づき、お弓を捨て一人で湯布院に逃れた。興禅院という寺の門前で倒れていたとき住職に助けられ、仏門に入り名前を禅海と改めた。ある日禅海が耶馬溪に托鉢に来た時岩山が行く手を阻む難所であった。横の絶壁の下には山国川が流れている、まさに命を奪う難所であった。禅海はここに洞門を掘り人の命を救うことこそ自分の罪業をつぐなう道であると気づいた。村人の嘲笑をよそに禅海は一人でノミを振るい洞門を掘り始めた。三十年の年月が流れ禅海は八十歳を越えた。だが旗本の主人の子実之助があだ討ちのために禅海を見つけ出した。しかし肉落ち骨の見える姿で掘り続ける禅海の懺悔を尽くした姿に打たれ、あだ討ちをやめ手助けして洞門を完成させたのだった。

5月
 古事記には、「因幡の白兎」の神話がある。この神話は古来の医療技術を伝え、また慈愛の尊さを教えている。
大国主には多くの兄弟がいて皆で因幡の国にでかけた。
兄弟達は大国主に荷物を持たせ従者とした。気多岬に着くと丸裸の兎が伏せていた。兄弟達は『お前の体を直すには、海水を浴び、山の上で風にあたるとよい」と教えた。
兎がその通りすると海水が乾くと皮がひび割れ傷はひどくなった。そこへ大国主が遅れてやってきた。
どうしたのか兎に聞くと「私は隠岐の島からこちらに渡ろうとするとき、ワニサメに対しどちらが仲間が多いか競争しよう、仲間を沢山あつめて気多岬まで一列に並びなさい背中の上を走りながら数えるからと言ったのです。ワニサメがそうするとその上を跳んで行って、地面に降りようとするときに「お前達は騙されたんだよ」と言うと怒って皮を剥いでしまったのです』と答えた。大国主は兎に「河口の真水で体を洗い、生えている蒲の花粉をとってその上で寝なさい」と教えた。
兎がその通りにすると体は元通りに戻った。

6月
人生において、いちばん楽しく立派なことは、一生を貫く仕事があること。
人生において、いちばんさみしいことは、することがないこと。
人生において、いちばんみじめなことは、人間として教養がないこと。
人生において、いちばん醜いことは、他人を羨むこと。
人生において、いちばん貴いことは、奉仕をして恩をきせぬこと。
人生において、いちばん美しいことは、すべてのものに愛情をもつこと。
人生において、いちばん悲しいことは,うそをつくこと。
人生において、いちばん素晴しいことは、感謝の念を忘れぬこと。
(福沢諭吉の人生訓より)
人生を充実させるには、今日という日が一度限りだと自覚せねばならない。明日も明日で二度とない一日なのだ。


7月

人は誰もが幸せになりたいと思っている。幸田露伴は著作「努力論」で、自らの体験の中から、人生に幸福をもたらす三つの秘訣として「惜福」「分福」「植福」を説いている。
「惜福」とは、幸福を受け尽さず惜しんで抑制すること。そうすれば幸福は尽きることがない。庭のりんごも十二分に実らせれば、収穫は多くとも木は弱り翌年の収穫は望めない。だが控えめに実らせれば翌年の収穫も今年と同様に多くなる。
「分福」とは自分の得た幸福を人に分け与えること。人に分け与えれば必ず自分に返ってくる。りんごを欲に目がくらんで独り占めせずに分けあい一緒に食べれば、周りも和やかになって自分も一層大きな幸せを呼び込むことになる。
「植福」とは、 幸福の基となる種を植えること。
人にとっては小さな親切に過ぎない行いでも、大きな幸福に育つこともある。やがて数百個の実のなるりんごの木も、指先でつまめるほどの小さな種を植えることから実現するのである。

8月
自動車用品販売のイエローハットの創業者で相談役の鍵山秀三郎氏は30年以上に亘ってボランティアで公衆便所などの便器清掃を続けている。
鍵山氏の清掃ぶりは徹底している。便器は熱湯を流して洗剤とスポンジで洗うが、なかなか落ちない水あかや尿石はナイロンタワシやサンドメッシュで徹底的に磨く。大便の便器はもとより、小便の便器の尿の溜まる部分にかぶせてある蓋の裏まできれいに磨くのである。素手で蓋を取り上げ、その裏わタワシで磨くのである。
手袋をしないのは、感覚を鋭敏にするため。素手なら便器にこびりついた髪の毛一本でも見逃さない。
便所清掃を始めた理由は、人間の心のすさみをなくし、社員の心のすさみをなくしたかったら。
「トイレの磨きは心の磨き」なのである。
人間として重要なことは、気遣い、気働き、気づくである。こういう人間になるには、謙虚で、骨惜しみや手抜きをしないことが大切でが、これからの精神は掃除を通じて磨かれるものである。
掃除をすることは、国籍や人種をこえて、喜び、爽快さ、清潔感を分ち合える。
今では中国、ブラジル、米国、モンゴル、台湾にもこの運動は拡がっている。

 9月
悪いことをしたら 身の置き所がなくなる。 恥ずかしいことをしたら 人前に出られなくなる。喧嘩をしたら 世間が狭くなる。
こんなことさえしなければ 誰に遠慮がいるものか。世の中をできるかぎり広く渡ってゆこうよ。
世間のつきあいは面倒だし好きになれない人もいるからと小さい殻のマイホームに閉じこもる人も結構多くいる。
でもそれでは広い世間に身を置きながら、自分で自分を狭い世間に閉じ込めることになるだけではないか。
誰とでも仲良くしたら、世間はみんなお友達だらけになる。
だから手と手をつなぎあい、世の中を広く渡ろうよ。
相手に対しいばってばかりいると嫌われる、理屈ばかりを押し通すと敬遠される。へんくつすぎるとよけ者にされる。
同じ立場に立って相手を認めてあげると打ちとけることができ、心と心をつなぎあうことができる。
いつも心を広く保ってゆこう。
そうすればこんな自分でも心を高く持ち、心豊かに暮らしてゆけることになる。

10月
世界にはとてつもないランナーがいるものだ。
ウルトラマラソンランナーのフランス人セルジュ・ジラール氏(52)は9月5日、パリからユーラシア大陸を横断して東京迄の19,097kmを260日と17時間52分で走破。毎日平均73kmを休まず走り続けた。
昨年12月18日にパリをスタート、毎朝4時過ぎにスタートし、 葯4km毎にエネルギーと水分補給を兼ねた休息を取りながら午後4時半頃まで1日10時間を走るのがパターン。フル2時間58分の実力ながら、時速7kmの緩走で9ヶ月近く続けた。
通過した中、19カ国には砂漠があった。中国では気温51℃、マケドニアでは零下17℃の中を走った。
ハチの大群に悩まされたこともあった。食事は毎日8000kcalと水は10L、スタート時の体重は64Kgだったが、ゴールの東京では54kg、最初の3ヶ月で10kg落ちたが後は変わらなかった。身長は177cm。成功の秘訣は、80%が精神力、「人間は自分が想像してできると思えることなら、達成可能だ」が信条だ。


11月

歯の健康は生命とも関わっている
硬い歯ブラシでごしごしやっているうちに、知覚過敏の症状が出てしまった。
熱いもの、冷たいものがジーンとしみる。歯の付け根に近い部分は象牙質で小さな孔が沢山あいている。歯肉が退縮して象牙質が外にでるとこの孔から熱いもの、冷たいものが入り込んで神経を刺激してしみることになるのだ。 早速掛かりつけの歯科医で応急処置をしてもらい、知覚過敏用の歯磨きをもらって、歯ブラシも柔らかめに換えて症状が何とか治まるようになった。
ところでスポーツマンにおいても歯は大切だが、中でも重要なのは噛み合わせであるとされている。歯には、物を噛む、発音を助けるという機能のほかに、全身を支えるという機能があるからだ。
噛み合せは全身の筋肉や骨格に多大な影響を与える。
おかしな噛み方を続けると顎に筋肉に無理な力が掛かる。これとつながる首筋の骨や筋肉にも影響がでる。
僅かな噛み合せのずれが致命傷をもたらすのである。




12月


11月19日の東京国際女子マラソン、一般出場401人中、完走303人、当会ナッシーさんが3:24:55、222位で完走。
気温10℃、冷雨の悪条件の中、よくぞ耐えて完走された。皆で賞賛の拍手を贈ってあげよう。

中継を見たが、高橋直子(34)には、やはり年齢からくる”かげり”が出ている。
爆発するような強烈なスパートは若くないとできない。駆け引きのうまさが出なければ次第に勝てなくなってくる中年ランナーの姿を感じてしまった。
それにしても、アテネ五輪に出してやりたかったと、いまさらながら思う。
アテネに出場できなかったくやしさから、北京をめざすあまり、過酷な練習で体をむなしく消耗しているのは哀れである。
シドニー五輪で全盛期を誇っての勝者が、8年たった北京五輪で全盛期と同じ走りができるなんて、日々に老いていく人間の姿としてありえないことだ。
独立しているのでそれを教える指導者もいないから自分が見えないのだろう、
きっと。