ぺるけ式USB-DAC 〜 150Ω:600Ω Ver. 〜





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 数年前、「安い!」というだけの理由(袋かぶりの未使用品2個で確か1500円也)で、使うあてもなくネットオークションで手に入れたタムラのライントランスTK-113。1次と2次をひっくり返せば150Ω:600Ωにもなります。いささか変則的な使用なので一抹の不安はありましたが、なかなかどうして、データ的にも聴感上も、最初に作ったタムラのTpAs-4Sトランス式や次作のFET差動バッファ式にひけをとりません。出力電圧もなんとか1Vを確保できました。



 TK-113は写真のように、1次側インピーダンスが30、250、600Ω、2次側が600Ω。2次側は巻き線が分割された150ΩSplitタイプなので、両巻き線の並列接続で150Ωとしても設定できます。


 このうち最も大きな昇圧が期待できるのは30Ω:600Ω(数値上は4.47倍)ですが、当方のぼろい測定機器では受け側30Ωに十分対応できるほどの超低インピーダンスでまともなレベルの信号を送り出せず、トランス単体の測定データ(周波数特性や歪み率)の信頼性に疑問があったので、今回は見送りました。


 その次に昇圧比が大きいのは、1次側と2次側を逆にした150Ω:600Ω(数値上は2倍)と通常接続の250Ω:600Ω(数値上は1.55倍)。まず、この2つに加え、150Ω:600Ωを300Ω:1.2kΩに見立てた計3種類のトランス単体周波数特性と歪み率を測定してみました。




 【トランス単体データ】

 TK-113の公称周波数特性は30〜30kHz±1dBですが、右グラフのように実力はそれを遙かに上回る見事なものです。

 もっとも、高周波ノイズ除去も兼ねるトランス式用としては、300Ω:1.2kΩは高域がフラットすぎていて、150Ω:600Ωか250Ω:600Ωの方が適しているようです。

(※測定条件=送出側インピーダンス100Ω、トランス負荷は2次側インピーダンスと同じ)

 

 ぺるけさんを見習ってトランス単体での歪みも測定したみたのが右グラフです。

 通常接続の250Ω:600Ωが最も良好でしたが、逆接続の150Ω:600Ωや300Ω:1.2kΩでも思っていたほどの悪化はありませんでした。


 グラフの破線(残留歪み境界)は当方のこれまたぼろい歪率計の1kHz近辺での残留歪み(0.013%)。これが100Hz近辺や10kHz近辺では0.015〜0.017%あって、グラフの高域部の歪みがやや多くなっているのはこのせいかなと思われます。


 ぺるけさんが公開されている「ライン・トランス実測データ」の中では、タムラTD-1Wとよく似た特性でした。 

 こうした結果から、トランスなどでの損失を差し引いても0.9V程度の出力が見込める逆接続の150Ω:600Ω仕様でAKI.DACキットと組み合わせることにしました。 

 余談ですが、AKI.DAC-U2704キットは今回用で3個目。添付されている取扱説明書の文字が回を追うごとにどんどんかすれたり潰れたりで読みにくくなっています。1700円というリーズナブルな価格には感謝していますが、ただでさえ素っ気ない取説なのに、それを判読自体に苦しまねばならない状態にしておくのは商いとしていかがなものか、と思うのは私だけなのでしょうか?


【回路図】

 
 

 キット部の変更部分は、ぺるけさんの推奨定数に準じた赤丸の8カ所です。



      

 R12+C18、R15+C19で構成するローパス・フィルタのカットオフ周波数は49.8kHz。30kHz〜70kHzの間でいろいろ組み合わせてみましたが、このトランスの場合は45kHz〜50kHzあたりがおさまりがいいようです。C18、C19は0.1μと0.033μの並列です。

 ※カットオフ周波数(Hz)を求める計算式は1000000÷(2π×μF×Ω)で、C値を一定のままR値を増やせ(減らせ)ばカットオフ周波数は下(上)がりますし、同様にR値一定のままC値を増やせ(減らせ)ばカットオフ周波数は下(上)がります。

 2次側負荷のR13、R14は、当初はトランスの2次側インピーダンスに合わせて620Ωにしていましたが、0dB.FSでの出力電圧が0.96Vだったため、切りのいい1Vの大台にのせようと750Ωに増やしました。しかし、その結果、トランスの高域側がよりフラットになるので高周波ノイズの遮断性がやや悪化、残留ノイズが0.02mV程増えてしまって、「何かを求めれば何かを失う」のは人生だけではないですね。


 スッポンポンで失礼します。あまり期待してなかったもので、服の用意をしてませんでした!

                   ↓ 付け替えや調整し易いようキット部のCR類の多くを平ラグに移したので基盤はスカスカ

                             ↑ 手前の丸形半固定抵抗はZobelネットワーク用、奥の長方形半固定抵抗はLPF用


【特性】

 出力電圧=1.01V(0dB.FS)

 残留雑音=0.12mV(周波数制限なし)

 周波数特性=右グラフ

 歪率特性=右下グラフ


 残留ノイズが少々多いのは裸ん坊でシールドが不十分なためのようです。TpAs版でもケースの蓋を開けると0.02〜0.03mV増えますので、ケースに入れてやれば0.1mVを切るのでは?

 変則的なトランスの使い方をしたにもかかわらず周波数特性、歪率特性とも上々の結果が得られました。さすがはタムラのライントランス、常用出力帯での50Hz歪みが0.04%前後なんてすごいですねえ。
 ※周波数特性、歪率特性ともWaveGene+WaveSpectraで計測。


【まとめ】

 さて、肝心の音ですが、トランス式特有のしっかり腰のすわったナチュラルないい響きです。駄耳には先発組のTpAs-4S版との違いはほとんど感じられません。

 強いて違い(らしきもの)を挙げるとすれば、高域の滑らかさと艶やかさはTpAs-4S版に半歩譲るかな、という感じがします。中域はこちらの方がややクリアかな…と。低域に関しては駄耳では区別できませんでした。



 とても素直な良い子ですから、グレないうちにタカチのきれいなおべべを着せてあげます。
                   (2012.10.23)



 【追補】
 トランス式USB-DACで、何人かの方から「ぺるけさんのより小出力だが、音量不足にならないか?」といった問い合わせがありました。それぞれお使いのアンプを伺って個別には返答しましたが、ざっとした目安を記しておきます。

 ●プリアンプ+パワーアンプ構成の場合=プリアンプのAUX端子の入力感度は普通200mV前後ですので、これに繋げばまったく問題なし。

 ●パワーアンプに直接入力の場合

@アンプの取扱説明書に入力感度の記載がある=入力感度とはそのアンプが公称最大出力を出すのに必要な入力電圧のことですから、DAC出力が入力感度をそこそこ上回っていれば、基本的には問題なし。

A入力感度の記載はないが、利得(ゲイン)の記載はある=ちょいとめんどうですが計算して入力感度を求める必要があります。

例えば、某社の2A3シングルアンプキットには出力3.5W+3.5W、ゲイン18.5dBとあります。アンプの利得とは出力電圧÷入力電圧のことで、18.5dBは8.41倍にあたりますから、このキットは入力電圧を8.41倍に増幅する能力があるということです(dB計算の仕組みについては触れませんので、早見表を使うなどして下さい)。次に出力3.5W時の出力電圧を求めます。電力(W)=電圧(V)×電流(A)ですからオームの法則によりW=電圧の2乗÷抵抗(この場合はスピーカーのインピーダンス)となり、電圧の2乗=3.5(W)×8(Ω)=28。 √28=5.29で、出力電圧は5.29Vになります。最後に、5.29V÷8.41倍=0.63Vで入力感度が求められました。

B入力感度も利得も不明の場合=発振器やミリバルなどを使って実測する。

 DAC出力が入力感度をそこそこ上回っていれば「基本的には問題なし」としたのは、拙作DACの最大出力(0.67V〜1V)はデジタルフォーマットの最大音量(0dB.FS)でのアナログ出力ですので、アンプによっては録音レベルがうんと低いソースだとフルパワーを出せない可能性があるためです。ぺるけさんが1.6〜1.9V出力にされているのは、そのあたりを考慮されてのことだと思いますが、悲しいかな、0.5W+0.5Wも出せば家族から眉をひそめられる拙宅6畳間環境では0.8V出力タイプで十分おつりがきています。(2012.10.26)


 1000μFの電解コンデンサ(C5、C6)を標準品に、半固定抵抗を固定抵抗に替えて、なんとかタカチのケース(HEN110412S)に収めました。(2013.06.19)






















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