CDプレーヤーよ、さようなら…?                〜恐るべし ぺるけ式USB-DAC〜







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     ぺるけ式USB-DAC + ネットブックPC



 パソコンから高品位の音を引き出そうと、お値段1700円也の秋月電商AKI.DAC-U2704キットをベースに、CRローパス・フィルタ(LPF)とライントランスを加えて高周波成分のカットと出力アップを図ったものが、ぺるけさんの「トランス式USB DAC」です。ぺるけさんのサイトはこちら

 2012年5月のサイト掲載以来、「とても魅力的な音色。もうCDプレーヤーはいらない」との評価がたくさん出ていて、当方も早速試してみようとAKI.DAC-U2704キットを入手しました。しかし、掲載直後から製作に使われたタムラのトランスがずっと品切れ状態で、当分手に入りそうにありません。たまにネットオークションで中古を見かけても、新品定価以上に高騰していて、ちょっとネ…。

 当方のメーン機(3段直結45/2A3互換シングルアンプ)は0.6Vの入力でフルパワーが出ますので、ぺるけさんの製作例ほど大きな出力は不要です。そこで、ヤフオクで見かけたタムラの基盤用トランスTpAs-4S(600Ω:1.2kΩ)でも十分いけそうだと思い、新品を2個3000円也で手に入れて作ってみました。

 結論から言うと「聴くほどに涙が止まらなくなる」音です。涙のわけは色々ありまして
その@ CDって本当はこんなにいい音がするんだ、という感涙 
そのA 過去に乏しい資金をあれこれCDプレーヤーにつぎ込んでしまったことへの後悔と嘆きの涙
そのB 自分のシステムの最大の盲点に気づかなかったことを恥じ入る涙……。

 この際ですからもうひとつ、おのが不明を恥じねばならないことを付け加えておきます。それは、ぺるけさんの製作記を拝見した時、「トランスなど使ってほんまにそんなにいい音が出るの?」と不遜な感想を持ったことです。ぺるけさん、すみませんでした。

 ★ここでちょっと通販CM流のPRを。(※あくまで個人の感想であって、効能をうたったものではありません!)

 この簡素なトランス式DAC、現用CDプレーヤー(巷では「特にクラシック系の再生に定評のある国産中級機」とされているとか)と比べ、楽器の定位の良さ、音場の広がり(特に奥行き)、ひとつひとつの音の輪郭などが圧倒的に優れていると感じました。一例を挙げるなら、現用機ではかすかにしか聞こえなかったチェロの弓と弦のこすれる音が耳につきすぎるほど明確に再生される(松脂の飛び散る音も聞こえる、とまでは言いませんが…)し、弦楽四重奏・第2ヴァイオリンのような地味なパートの楽器の位置もしっかりしていて、毎日、音楽を聴くのが一層楽しくなります 高域がやや硬めかな、という気がしなくもないですが、このお値段でこの音ですから、掛け値なしに(これまで聴いてきたような)CDプレーヤーはもういらないと思いました。(奈良県在住のUX生さん)


 【回路】 下は、ぺるけさんの製作例をほぼそっくり使わせていただいた回路図です。キットに追加したのは、小型トランス2個、抵抗5個、コンデンサ2個、LED1個だけ。

 キットからのアナログ出力は0.64Vほど。入力感度の高い当方のアンプならこのままで音量的には十分実用になりますが、残念ながら、高周波中心の残留ノイズが2.5mVもあって高域がギスギス、ザラザラしたお世辞にもいい音とは言えません。

 そこでまず、R12(75Ω)とC18(0.033μ)で構成される-6dB/octのLPF(基準周波数=約64kHz)で残留ノイズを0.3mV強まで下げた後、小型トランス(TpAs-4S)をくぐらせて0.07mVまで減らします。TpAs-4Sのインピーダンスは600Ω:1.2kΩ(巻き線比1:1.41)ですので、わずかですが出力もアップできます。

 高域の安定性を高める役割も兼ねるR12は、ぺるけ式では150〜160Ωですが、そうすると出力が0.6Vを切ってしまってちょっと苦しいので75Ωとしました。 これですと、efuさんのテスト信号発生フリーソフトWaveGeneの0dB出力で0.67Vのアナログ出力が得られます。

 TpAs-4Sは今や製造中止ですが、トランス単体で周波数特性を計ってみると20Hz〜10kHz/0dB、10Hzで−0.2dB、20kHzで-0.15dBと、カタログ値(30Hz〜20kHz/±0.25dB)を上回る実力の持ち主のようです。





 キット部回路図はこんな様子で、これが4cm×4.5cm角の基盤に収まっています。米粒以下のパーツも多く、これを全部半田づけしなければならないのなら、老眼の当方にはまず無理ですが、ありがたいことにユーザーが失敗しそうなところは全部組み付けてあって、電解コンデンサや水晶発振子など大型パーツ13〜15個を取り付けるだけでOKです。

 6カ所の赤マルは、ぺるけさんの作例に従って電解Cの容量を変更した部分です。基盤にも青色LEDが組み込まれていますが、金属ケースに収めると見えなくなるので、これもぺるけさん作例に従ってケース用LEDの電源をC14(回路図左下部分)の±両側から引き出しました。C14を基盤に半田づけする際、裏側にはみ出した2本の足をカットせずに絶縁チューブをかぶせて折り曲げ、先端を外部LED電源の取り出し口にすると便利です。


【ハラワタ】

 
 ケースは手元にあったタカチYM-180(180×130×40mm)を使ったので、中身はスカスカです。8P平ラグはLPF用のCとRを取っ替え引っ替えするのに便利なため設けましたが、最初から一発で決めるのでしたら、トランスが乗っかってるユニバーサル基盤を少し広めにして、CR類をそこに組み付ければうんとコンパクトに仕上がります。

 AKI.DAC-U2704のサイズは40×45mm。キットにはUSBコネクタ横の四角い枠に収まるアナログ出力用のRCAジャック2個が付属していますが、使わずに、LPFにつながるコードを基盤に直づけしています。

 中央でのたくっている赤黒の撚り線はパネル正面用LEDの配線です。


【特性】 WaveGeneとWaveSpectraを使って得られた周波数特性と歪率特性です。f特はぺるけさんの作例と変わらないようなのでひと安心。歪みはぺるけさんの2倍ほどありますが、LPFの基準周波数をぺるけさんより高く設定しているためだろうと思います。


【番外】 トランスが届くまでの間、LPFだけでどの程度の音が出るのか、遊んでみました。@は何十年か前の半導体アンプのようなキンキン、ザラザラした非常に疲れる音 Aは@より聴きやすく、低域から高域までバランスはいいものの、音に金属臭がつきまとっている感じ Bは高域の伸びに不満はあるが、音質が一番良く、CDプレーヤーと取っ替えてもまあいいか――というのが駄耳の判定。

 トランス式に変えてみた結果、音質自体はBと大差ないものの、高域の寸詰まり感がなくなって全体のバランスが良くなったほか、トランス式の方が小さな音を拾う能力が圧倒的に高くて、これまで埋もれていた音が表に出てきます。空気が澄んで、普段はかすんでいた遠くのものがくっきり浮かび上がる「雨上がりの一刻」という感じですか。
 


【PC選び】手元にあるくたびれたノートPC3台(東芝SatelliteJ11が2台、acer Aspire one=いずれもWindows機)に接続、それぞれでの出力レベル、周波数特性、歪率、残留雑音を測ってみました。いずれも出力と周波数特性は測定誤差の範囲に収まっていましたが、PC本体のノイズの影響を受けやすい歪率と残留雑音については3台間で結構差があり、一番優秀だったacerのネットブックと組み合わせることにしました。
 acerは小型軽量なので場所をとらず、ラックから引っ張り出して手元で使うのにも便利ですが、iTunesへCDを読み込ませるたびに光学ドライブを外付けしなきゃならないのが玉に瑕ですね。

  acer(Atom1.6GHz)での残留雑音   東芝J11(Celeron2.4GHz)での残留雑音 東芝J11(Pentium4 2.2GHz)での残留雑音

 最後になりましたが、このような「超優れモノ」を世に送り出していただいたぺるけさん、ほんとうにありがとうございました。 (2012.08.19)


【追補】 -85dB前後という実用上問題ない低レベルではありますが、500Hzとか1kHzとかからいきなりピョンと立ち上がって高域に向かって収束していくノイズ(上の3枚)の出方が、どうも面白くありませんでした。

 立ち上がる周波数が東芝J11(Pentium4)では500Hz、他の2台は1kHzと異なっているので、USB-DACのものではなさそうには思えます。念のため、掲示板で先達の皆さんのご意見を伺いつつ、DAC内の配線を動かしたりアースループのチェックをしたりして変化がないか探ってみましたが、やはりまったく変わりません。

掲示板でのやりとりの中で「ひょっとして」と思ったのが、ご自身のぺるけ式USB-DACをチェックして「そんな波形は出ない」とお答えいただいたfixerさんとの関係機器の繋ぎ方の違い。当方はWG→USB-DAC→市販ADC→WSという信号ルートを1台のPCで行っていたのですが、fixerさんは送り出し側(WG)と受け側(WS)それぞれ別のPCを使われていました。

 2台に分けてみると、見事に鋭いピークの連続が無くなり(正確には表示されなくなり…かも?)、ノイズレベルは-98dB前後まで下がりました。どちらがより実態を反映しているのかは検討課題ですが、こちらの方が「いかにも残留ノイズ」って感じの波形ではあります。

 画像は東芝J11(Pentium4)から送り出し、acerで受けたものですが、これを逆にしますとacerでは見あたらない500Hzの山が東芝J11ではごく低くなったものの確認できますので、PCの個別ノイズも結構混ざっているな、と思いました。(2012.08.21)


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