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桶胴の製作


まずは、素材の桐すのこを分解します。1セットは2枚組で幅6cm、厚さ1cmの板が8枚取れます。1尺6寸の胴は、これを24枚使いますので、最低3セット必要です。

横桟をハンマーで慎重に叩くと、釘が抜けてきます。
このままでは少し厚いので、7mmくらいまで厚みを落とします。

実は、胴を樽型にするメリットには、箍が効くことの他に、厚みを減らして軽量化できるということが挙げられます。

もっと薄く出来るかもしれませんが、合い釘を打ちたいためにこのくらいにしています。
英哲形桶胴太鼓は胴の長さが1尺8寸と、某大手太鼓メーカーのカタログに書いてありましたので、ミーハーの私はそれを踏襲。54cmに切断します。
(1尺6寸の場合。小さい太鼓は、それなりに小さくしています。)

横桟の釘穴が3箇所にありますが、両端はこのときに切り取ってしまいます。
桶などを作るときの1枚1枚の板のことを榑(くれ)と言うそうです。外面を丸くするには、榑の枚数が多いほうがいいのですが、削る手間は増えてしまいます。

本当は、もっと少なくてもいいのですが、材料を余さず使うために48枚割りにします。

丸のこをテーブルに取り付けた簡易丸のこ盤にて、縦に二つ割にします。
ちょっと理屈をこねますが・・・
桶胴の歌口部分は、私の場合、1尺6寸でφ390mm(1尺3寸)。胴の真ん中は直径でφ400mmを狙っています。 直径が1cm増えると円周は3.14cm増えます。箍がよく効くのはそのため。これを榑の数の48で割ると、0.65mm。榑の片側を0.32mm、中央部が膨らんだ弧に削る必要があります。
これを職人技でやるには、何年かかるか判らないので、写真のごとき治具を作りました。名づけて「あつひろ式正直台」。
榑を取り付ける台は蝶番で角度を設定できるようにしています。

360°÷48÷2で、片側3.75°です。カンナに鉄板が貼り付けてあるのは、上下のレールでカンナが磨り減るのを防ぐため。
削り終わった榑。両端は25.5mm、中央は26.2mmです。ノギスは必須ですね。

けびきを使って、台形の底辺側、つまり桶の外側になる方から3.5mmに合い釘の墨をけがきます。両端から5cmと、中央に3箇所の合い釘を打ちます。
合い釘は、真鍮の釘の頭を斜めにペンチで切ったものを使っています。
けがき線に正確に打つのは至難の業なので、φ1.5mmのドリルで下穴を開けてあります。

当然、裏面にも下穴は開けてあります。合い釘というよりは、ダボの役割に近いです。
釘を打ったほうに、木工ボンドを塗ります。

両端を締めているのは、「はたがね」という工具です。歯ブラシを使って、ムラなく塗ります。
最近、歯ブラシでは辛気臭くなったので古くなった刷毛を使っています。早く塗れてgood!
胴の直径に合わせて作った組み立て台に、仮止めして順次組み立てていきます。
半分組み立て、もう1台の組み立て台に残り半分を組み立てて、ふたつを合わせて1つの筒状にします。
台ごとひっくり返しても落ちないように、上から被せる方は両端の榑を釘で仮固定します。
こんな感じ。グニャグニャです。
1枚の榑が船型なので、接着面は隙間だらけの状態です。
両端を番線で絞って、接着面を密着させます。
番線で絞っても、写真でペンチでつかんでいる所と、反対側のループになっているところの付近しか絞まりません。だから、1箇所に番線を3本、120度ずつ向きを変えて円周上の6箇所で絞ります。
樽型になってきました。このあと、両側にフラットバー13×t3で作った箍をはめます。
カンナ掛けは熟練しないとうまくいかないので、オービタルサンダーで角を削ります。
掌と指でデコボコを感じながら作業を進めます。
唯一、職人技が必要な工程かもしれません。
削り終わった胴です。このあと、歌口の部分を削ります。
48枚も榑をつなげた胴は、当然のことながら歌口部分はガタガタです。これを定盤の代わりになるような平らな台の上に載せます。私は、ガラステーブルの上でやっています。
ガタガタする時も、どちらかに固定しながら、ガラスの上に寝かせた鉛筆で印を付けます。
こうすると、一番飛び出したところから鉛筆の直径の半分の位置に印がつきます。この墨を見ながら、幅が均一になるようにカンナで歌口をまずは平らに削ります。
ガラスの上でガタガタしなくなればOK。
このあと、内側をそりカンナで削り、外側は普通のカンナで削って面取りします。
私は歌口の平面度の方がビビリ音の発生を防ぐには重要だと思っているので、面取りの形状はやや適当です。角をペーパーで落として丸く滑らかにします。
砥粉を同量の水で溶いたものを塗って、半乾きの時にのの字を書くようにウエスで擦り込み、余分な砥粉をふき取ります。
ワシン合成漆の下塗り液を塗ります。これを塗ると、合成漆が余計に胴の木肌に染み込むのが防げます。
水性で約20分で乾くので、2〜3回塗ります。
ワシン合成漆を塗ります。伸びが悪く、案外隠ぺい力がありません。といって、厚めに塗ると、すぐにたれてしまいます。
根気良く、薄めに(塗料を薄め液で薄くするという意味ではありません。)刷毛でよく広げて塗ります。
およそ8時間は乾燥させて、軽く240番くらいのペーパーをかけ、塗り重ねます。
私は、5回塗り重ねています。
歌口をペーパーで整えて、組み立てた完成形です。
昔懐かしい、木琴のような匂いがします。





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