特別寄稿 薩摩琵琶・臨済宗僧侶
関川鶴祐 師
“いのち”につどふ
如月「ひだまり会」参会の記
かねて旧知のKさんより、富雄の古民家宅に法隆寺の壁画「聖観音立像」の模写作品があり、そのご宝前で琵琶演奏とのご依頼を受け、はるか少年期の風光―魂を震撼させた法隆寺の世界が心中に蘇ってきた。
松並木に静かに舞い降りる雪花・・・エンタシスの柱を抱いた時の香り・・・そして釈迦三尊の御座す
金堂―いのちの深淵に触れ得た時空である。
「花の春立つ朝には、日影曇らでにほやかに、人の心も自ずから、のびらかなるぞ四方山」の心境で
その日を迎えさせていただいた。
初めに青山茂先生のお話があり、昭和24年1月、金堂火災によって、損傷した壁画の犠牲は、焼土と化した日本人の心にその文化的な価値を芽生えさせ、日本の宝―文化財―を守り伝えていかなくてはならないとの気運と願いが、国民全般に深く浸透したとのお話に、改めて自身を初め、多くの人々がその恩恵に浴していることへの感謝の念がふつふつと湧き上ってきた。又、青山先生のガイドブック片手に大和路を巡歴した少年の時空を想う時、感慨ひとしおであった。
絃楽器のルーツとされる琵琶も、中央アジアから伝播して千数百年・・今日に至る迄その本質を変えることなく、日本固有の音として深化し、演奏され享受し得ている奇跡・・・
奇跡の国─日本―に生かされある私たちは、命の結晶ともいうべき文化遺産を、未来を生きる子供たちや孫たちに伝えてゆく使命があると信じる。 真・善・美の出会いに感謝!
誠にありがとうございました。 合掌
平成廿四辰歳 五月十八日観音縁日に記す
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