バランスを崩した生命球
昔、バブルの頃でしたっけ? 「生命球」というのがありましたよね。
水と水草と魚やエビなどの小動物が中に入れられたガラスの球が閉じられていて、内部だけでバランスを保ち、外部から酸素や餌を供給しなくてもそれだけで一つの閉じられた世界として生き続けるというやつです。
士郎正宗先生の漫画「ドミニオン」の中で
その生命球の中で一匹の魚が太り過ぎたためにバランスを崩して生命球が息絶えてしまったという1コマ(本当に1コマ)がありました。
今の日本の経済はそんなバランスを崩した生命球に例えることができるのではないでしょうか。
大企業が利益を独り占めして周りに分け与えないから、周りの企業やその社員さんが活力をなくしてしまい、経済全体が活力を失ってしまった。
それからこんなのもありました
NHK教育の子供向けの番組だったと思うのですが、
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人間の体の手や目や口といった〝体の各部〟がまとまって〝胃袋〟に対して文句を言います。自分たちがせっせと働いても美味しいものは全て〝胃袋〟に入ってしまうだけだと。そして〝体の各部〟はストライキをします。そうするとどうでしょう。体の各部は元気が出なくなってしまいます。そこで〝胃袋〟が栄養を分け与えてくれていたことを知る。
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という内容でしたが、今の日本の経済は丁度その逆ですね。
〝胃袋〟たる大企業が利益を独り占めしてしまって、分配しないから〝体の各部〟たる下請けの会社に栄養が行き渡らなくなって、経済全体が元気を失っている。そして〝体の各部〟が動けなくなって〝胃袋〟に食べ物が入って来なくなった。そんな状況ではないでしょうか。
安倍首相は大手企業に
下請け企業に無理な値引きをしないようにお願いされていますが、効果はないでしょうね。
大企業も大勢の人の集まりなのです。いえ、大企業だからこそ業務は細分化され、物を売る人と仕入れる人が別なのです。
これからは成果主義だと言われています。成果によって人の業績を評価しようとしています。
物を仕入れるのが専門の人の成果とは1円でも、1銭でも安く物を仕入れることです。下請け企業に無理な値引きをしないようにさせるということは、仕入れ担当の人が成果を示すことが出来なくなるということですから。
どうすればいいのでしょう
下請け、孫請け企業の社長さんがこれ以上の値引きは無理だと、むしろ値上げをしないと取引きを断ると強く出れればいいんでしょうけど、そうすれば確実に取引先を失いますよね。それはできないですよね。そうと解っているから上位の企業は無理を押し付けても大丈夫だとタカを括っているのでしょう。
でも本当は、値引きを要求している人は危ない綱渡りをしているんですよ。そのことに気がついていないだけ。下請け企業の社長さんから「もう限界、これ以上の値引きは会社が運営できなくなる。」と取引きを断られ、そして他の下請け企業からも断り続けられるということがあれば、大企業といっても安泰とは言っていられないでしょう。
いえ、幾つかの大企業は既に崩れつつあります。
でも仕方ないですよね。因果応報。
「下請け企業の」、「その社員さんの」事情も考えずにひたすら値引きを要求し、自らを太らせ続けた結果、日本の経済という生命球のバランスが崩してしまったのですから。
2015/11/06