中村茂史一級建築士事務所 | ||||||||||||||||||||
大津の家 | ||||
敷地は京都市内、銀閣寺から琵琶湖に通ずる山中越えで15分ほど上った比叡平とよばれる別荘地。 | ||
高所のため夏場でも30度以上にならない避暑地だが、冬場は下界(京都市街地)より10度も低くなり、2月などは昼過ぎまで水道が凍って使えないこともたびたびだという。また琵琶湖岸なためか冬場の湿気が高く、近隣の家の外壁も異様に苔やらカビやらが生えているのが目立つ。 | ||
お施主さんは芸大で教鞭を執るデザイナーで近所にカメラマン、家具作家とやはりアート系友人がたくさんいらっしゃる。打ち合わせは建て替え前の平屋で行ったが、毎回のようにいろんな友達が打ち合わせの邪魔をしにくるのは楽しかった。やはり打ち合わせはお酒を飲みながらやるのが一番いい。 | ||
シンプルにするのは予算とは関係なく僕の目指すことだが、今回は予算の関係もあって2階などは個室を設けず、トイレ以外に建具なし。また物入れもつくらず、したがってその建具もナシ。これでふつうの家より300万円以上節約できたと思う。もっとも竣工後、半年ほどして2階に障子を追加した。鴨居や敷居溝はあらかじめしこんであったので建具屋さんが寸法をとってとりつけただけ。 | ||
1階には玄関、厨房、居間だけ。浴室を1階にもってこなかったのは、居間の広さを優先したため。2階の浴室は腰高までが一体成形のFRPで、水漏れの心配をしなくて済むし、壁は無垢の木(檜)を張れて都合がよい。竣工後に筆者(設計者)が訪問したときに宴会になって夜はこの檜風呂にいれてもらったがモー実に快適だった。換気が十分にできるように二方向に木製の突き出し窓をつけた。 | ||
2階は浴室・洗面所(トイレ兼用)、寝室、書斎コーナー。水周り以外は一体の空間になっていて大変快適だ。基本的に寝る場所だから極力階高を抑えて落ち着きのある空間になるようにした。壁は1階は漆喰塗りだが2階は杉落とし板をそのまま見せている。これも落ち着き感に一役買っている。 | ||||||
<配置図> | ||||||
■ 主な仕上げ ■ 補足資料 | |||||||
写真上・中:居間・食堂 | |||||||
<1階平面図> | <2階平面図> | |||
入居5年目の冬 2002年1月、杉の家の室内環境調査のため今までに建てた内の何軒かを訪ねることとなった。比叡平のOさん宅は平均して年に二度くらいは訪問していたが今回は写真も撮らせていただいたので、新築時から比べてどうなったかを少し見てみよう。 外壁は初めの二年くらいは柿渋をお施主さん自らが塗られた。何回か塗り重ねられることで保護層をつくっていくのだが、雨で流れていくので定期的に塗る作業が必要になる。で現在は塗り重ねられた柿渋が流れ落ちた感じの表情だ。これもまたおつなもんだ。 室内の床板は厚さ4センチの杉板だが、入居時に一度リボスのなんとかを塗ったきりでその後は特になにもされていないとのことだったが、なかなか厚みで硬質の塗膜が作られたらしくそれほどはげ落ちていない感じだった。全体的にしっとりとしたいい感じ。 梁や柱の構造材は4年も経つと杉の色は心材(赤)と辺材(白)の差も目立たなくなり全体的に茶色になる。 | ||||
写真上:二階の北東の4畳くらいの空間は初めは南側と家具で仕切っていたが現在は木製建具で仕切っている。南側は子供達の寝室。 写真下右:入居当時の二階空間 | ||||
二階は初めは間仕切りのないワンルームとして、まだ幼い子供達と親が一緒に寝るようになっていた。そして5年たった現在では木製の引き戸によってワンルームは5つの空間「両親の寝室、子供達の寝室、納戸、家族の勉強部屋、間」に仕切られた。 | |||||
写真下:夜景?が暖かい雰囲気になる杉の家。杉の家の感想は?と聞けば「自分の部屋がないこと」以外は満足だそうである。 写真上:Oさん家では家族みんなで調理するのが慣習になっていて、だから調理場はカウンターとか充実している。このカウンター兼食器棚は巾が600もあって引き出しや下の扉は両側から使えるようになっているアイデアもんだ。 | ||||
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