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シンプルな杉の家

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「持続可能な社会・循環型社会を確立するために住宅建築がなし得ること」

持続可能な社会を実現しようという気運が高まってきた今日、本当に求められるべき木の家とはどのようなものでしょうか? 私は基本的に何が本当に大切なのかを見つめ直し、素のシンプルな杉の家を考えました。

 真に環境共生
木材は太陽エネルギーにより育成されるものです。
鉄やアルミニウムなどのように精錬過程で多大なエネルギーを消費することなく自然が自然に育むものです。
また廃棄に必要なエネルギーも本質的にゼロです。
家を建てるために伐採する木の樹齢以上に家を長持ちさせ、その需要量を供給量に見合うようにコントロールできれば、我々は環境に負荷を与えることなく永久に建築用材を自然から得られます。

 並材の活用
材木は主に節のあり具合で節の多い順に一等、小節、一方無地、四方無地などの等級に分けられます。これがいつのころからか無節をありがたがる風習ができあがりました。しかし製材した木に節があるのは当たり前で自然なことです。
一等材(並材)の値段は四方無地の20分の1くらいです。並材を床や壁に厚み3〜4センチの板で使うことでタルキや根太を省略でき、さらには仕上げ材・断熱材も兼ねることができます。杉材の材積は増しますが、杉板以外の材料・工程・手間が減るためにそのコストアップ分は相殺されます。
 

 シンプル&コンパクト
建物の最も本質的な部分である構造体がお粗末で、仕上げ或いは設備といった取り付けたり張り付けたりする表面的なことばかりにお金をかけた住宅が、流行とともに外観・仕上げや設備が古臭くなったといっては短いサイクルで建て替えられているのが今の日本の現状です。


私たちは持続可能な社会を私たちの自らの選択で作り出す時代に入りつつあります。
シンプルな杉の家ではいたずらに凝った設計にして材料・施工手間を増やすことをなくし、単純明快な設計とすることでコストを抑えつつも手間はかかるが理想的な木構造をめざしています。
またなるたけ無駄のない合理的な間取りにすることで総工費をおさえるようにします。
さらに構造体や床・壁などの材料には集成材や張り物といったものは一切使わずに無垢の材料をなるたけ手を加えない形で活かします。そのため具体的には以下のような方針をとっています;

1 屋根は切り妻、プランは単純な矩形とする
平面あるいは立面で凹凸のあるプランは同じ面積の矩形のそれにくらべ表面積(=仕上げ材)が増えてしまう。また雨仕舞い上も好ましくない。

2 躯体及び部材断面を整理・統一化(金太郎飴型)
床梁・小屋梁断面寸法を統一し、梁せいは支持スパンにかかわらず同寸を維持して用いている。これにより墨付け・刻み・建て込み・造作の手間、間違いは大幅に減少し、単純な矩形平面・構造計画と相まってバランスのよい理想的な構造体となる。
また造作材についても寸法を極力統一することで、拾い出し・部材の加工や造作の手間を減らし、部材同志の使い回しもよくしている。

3 設備は原則として安価な既製品を採用する
一般に低価格品と高価格品の実用的な差はほとんど認められない。また設備機器は住宅の寿命よりはるかに短いサイクルで交換が必要であることも考慮して、設備機器には安価なものを薦めている。

*「シンプルな杉の家」の構造材・厚板材・造作材等は原則として全てTSウッドハウスの材を使っていますが、奈良県や三重県内で建てる場合には当該県産材も利用できますのでご相談ください。

シンプルな杉の家
実際に建っているシンプルな杉の家は間取りこそ異なりますが、工法・材料など全て同じ仕様になっています。

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 屋根・軒の出

小屋組には「登り梁構造」を採用することで深い軒の出にもかかわらず軒先が室内側からの視線を妨げるほどには低くならず、屋根構面が水平に近くなるため建物全体として高さを抑えることができ、屋根重量を軽減しています。

また野地板に杉の厚板(厚み40mm)を使用することで登り梁のピッチを6尺(1818mm)まで飛ばすことができるため、一般的な和小屋に比べて仕口数を大幅に減らすことが可能となり、さらには登り梁/棟木/桁等の部材がすべて渡りアゴで組み合わさることで強固な小屋組となり、その端正な美しさを家の外からも中からも見ることができます。

野地板はその厚み故に断熱性能あり、石油化学製品系断熱材(新建材)等の断熱材を使用することなくタルキなどの下地材も不要となり、木の材積こそ増えるものの工事の合理化が計られコスト的には相殺されます。

欧州に比べ雨量の多い日本では昔から「軒は深くとる」ことが大切であると言い伝えられてきました。「庇(ひさし)」と書いて「庇う(かばう)」と読むことからもそのことがうかがえます。

「シンプルな杉の家」では軒の出を十分にとるとで雨から外壁を守り、夏場の直射日光が室内あるいは南側開口部前の地面を熱することがないようにします。
物理的あるいは法的な制限がない限り南側に1.8m程度の軒の出を確保するようにしています。
(参考:南中時の太陽高度/夏至:約77゜、冬至:約31゜)

外壁は焼き杉板に漆喰、軒の出は1.8mを確保しています。

 土壁

土壁は文字通り「土に還る」ものでありこれほどの環境に対しローインパクトな壁工法はないといえましょう。
また適切に施工された土壁は地震に対して粘り強く抵抗し、優れた蓄熱性能により室内環境を安定的に保つものです。

土壁は荒壁のままでは土がボロボロと崩れていくため中塗り仕上げやさらに漆喰塗り仕上げと塗り重ねていきます。中塗りの色はたいへん落ちついた色味となりとくに寝室にはおすすめです。

漆喰塗りにすると室内はかなり明るいイメージになりますが壁に何かを貼ったり留めたりしにくいため、一部の壁を板壁にすることも検討されるとよいでしょう。

ちなみに土壁の家の室内の空気は「柔らかい」感じになります。

土壁はその性能を十分に発揮するために;
・十分な壁厚(75mm以上)
・下地の竹小舞の適切な施工(編み目の間隔)
・使用する土の十分な熟成時間
・十分な量の稲藁、すさの使用
・施工時期への配慮
等が重要になります。

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中塗り仕上げ

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子供も一緒に荒壁塗り

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 杉厚板の壁/板倉又は杉落とし板工法

厚さ3センチ以上の杉の厚板を柱に切った溝に落とし込んで壁を作る工法で、厚板の表面をそのまま室内側の仕上げとし、間柱と厚板の蓄熱性・断熱性で断熱材を省略できる。

また特筆すべきはその調湿性能で夏場等湿度の高いシーズンには窓を閉め切ることで室内の湿度が下がるのでエアコンに頼らずとも快適に過ごすことができます。(雨戸も閉めるとさらに効果的です。)

この工法は木材価格が異様ともいえるほどに下がっている今でしかできないと考えてよいでしょう。杉厚板のの家の室内の空気は「乾いた」感じになります。

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厚み4センチの杉板を1・2階共に採用し、1階の天井は2階の床板の裏側が兼ねています。
杉の床板はナラや桜等の広葉樹の床板と異なり柔らかいため膝への負担が少なく冬場でも冷たくならず、梅雨時でもサラサラとした心地よい質感を楽しめます。

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 お施主さんの感想
お施主さんによる入居後の住み心地についての報告です。

「甲陽園の家」猛暑の夏の感想。
「嵯峨野の家」
「西宮名塩の家」
「枚方の家」

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 架構
設計においては間取りと構造の整合/一体化を高いレベル(=バランスに優れた)で実現させるのが肝要で、そのためには努力を惜しみません。

渡り顎(わたりあご)とよばれる仕口を用いた工法は仕口部分における木材の刻み方として無理のないもので、一般的な十分な部材断面寸法をもたない通し柱工法のような仕口での通し柱の破損→修復至難とはならず、大地震による大きな変形後でも建物の再利用をしやすいという大きな利点があります。

戦後の木造の主流になった「短ホゾ+金物」による仕口では材の乾燥収縮に伴って緩くなったナットを締め直す作業が必要となりますが、現実には肝心な場所のナットは隠れていて締め直すことができず、仕口内部での金物の錆の問題も避けられません。大地震時には短ホゾ故に仕口内部におけるホゾによるめりこみ耐力が期待できず、細くて堅いボルトによるめりこみは割裂しやすい杉材にとっては好ましくありません。

こうしたことがあるにもかかわらず「大壁工法」「単ホゾ+金物」(多くはプレカットによる)が普及してしまったのは、大壁では構造材が見えないので梁に極端に細い材を使ったりする
手抜きが可能であり、金物に頼る簡略化した仕口故に構造材の刻み賃が安く建築費を下げられるからです。

一方、金物を用いない長ホゾを用いた仕口では地震などの短期的な外力に対してはまず耐力壁が抵抗し、続いて仕口がコミ栓と部材同志が互いにめりこみ合いながら粘り強く抵抗するという二段階の破壊モードをもちます。この粘り強さのお陰で、変形量は大きくなるものの躯体そのものの損傷は最小限に抑えられ、例え家が傾いたとしても立ちを直して壁を修復することで再び住居として使用可能となるのです。

将来的にはコミ栓を取り去ることで構造材はすべて分解できますから移築などの再利用も可能です。

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岡山の家

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西宮の家

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宇治の家

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 世界に誇れるニホンの伝統木構造
今日ニホンと呼ばれている地域では太古の昔より地震や津波、台風等の巨大な自然災害が絶え間なく続き、一方でヨーロッパではそれほどの自然の猛威に見舞われることは少なかったようです。

こうした自然環境の違いはその地に暮らす人間の意識にも大きな違いをもたらしたと思われます。

欧州においては人間と
自然は厳然と区別されるものとなったのに対し、ニホン地方においては人間は自然の一部であるという意識をもつにいたったのです。

こうした基礎的な認識の違いは地震という自然に対峙する建築物の構造のあり方にも全く異なる進化をもたらしました。

ニホンの伝統的な構造様式にのっとれば地震に対しては剛体をもって抵抗するのではなく十分な変形量と仕口の柔軟性/粘りを持たせることで「やなぎに風」のごとく「しのぐ」のです。

雑木林に囲まれた石場だての家

 石場だて
明治時代の初め、ニホン
政府は欧米に追いつけ追い越せとヨーロッパから自然科学や法律を導入し富国強兵に努めました。

建築の分野では「
ニホンの伝統技術は無用」という基本方針のもと、それまでに培われてきたにほん固有の木構造を検証することなく葬り去ることにしたのです。

その結果、建築は鉄とコンクリートを主体とする構造が主流となり、木造の住宅は足元がコンクリート造の混構造/ハイブリッド種になりました。

石場だては上部木構造が石の上に載っているだけで地面とは縁が切れています。従って大規模地震の際は地震エネルギーをまともに受けることがないため一種の「免震構造」になっています。

実際に建っている姿をみれば、石場だてがニホンの木構造のもつ本来のシ ンプルさ、清らかさを実感できます。

残念ながら「石場だて」は現行の建築基準法のもとでは「想定外」扱いで都市計画区域内では通常の手続きでは建てることができませんが、都市計画区域外なら「石場だて」を建てる技術のある職人さえおれば建てられます。

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All right reserved 中村茂史一級建築士事務所 
奈良県宇陀市室生村