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中村茂史一級建築士事務所

パン工房のら

「持続可能な社会・循環型社会を確立するために
住宅建築がなし得ること」

環境意識の高まり、安全な建材で家を建てたいという気運が高まってきた今日、本当に求められるべき木の家とはどのようなものでしょうか?
私は基本的に何が本当に大切なのかを見つめ直し、素のシンプルな杉の家を考えました。

それは工法・材料についてこれからも私達人類が地球という惑星で暮らし続けられるものであること=持続可能性のあるものであること、、、、その基本は明治維新とともに捨て去ったが江戸時代までは確かに存在していたものを学び直すことから始まりました。

実際に建っている「シンプルな杉の家」は同じ間取りの家はありませんが、工法・材料など全て同じ仕様になっています。

 具体的な方針/仕様について

1 並材の活用
材木は主に節のあり具合で節の多い順に一等、小節、一方無地、四方無地などの等級に分けられます。これがいつのころからか無節をありがたがる風習ができあがりました。しかし製材した木に節があるのは当たり前で自然なことです。
一等材(並材)の値段は四方無地の20分の1くらいです。並材を床や壁に厚み3〜4センチの板で使うことでタルキや根太を省略でき、さらには仕上げ材・断熱材も兼ねることができます。杉材の材積は増しますが、杉板以外の材料・工程・手間が減るためにそのコストアップ分は相殺されます。

2 シンプル&コンパクト
戦後の日本では
建物の最も本質的な部分である構造体がお粗末で、仕上げ或いは設備といった取り付けたり張り付けたりする表面的なことばかりにお金をかけた住宅が、流行とともに外観・仕上げや設備が古臭くなったといっては短いサイクルで建て替えられてきました。

シンプルな杉の家ではいたずらに凝った設計にして材料・施工手間を増やすことをなくし、単純明快な設計とすることでコストを抑えつつも手間はかかるが理想的な木構造をめざしています。
またなるたけ無駄のない合理的な間取りにすることで総工費をおさえるようにします。
*おおむね延べ床面積20〜30坪を目安にしています。(「間取り」のページを参照してください)

3 屋根は切り妻、プランは単純な矩形

4 躯体及び部材断面を整理・統一化(金太郎飴型)
床梁・小屋梁断面寸法を統一し、梁せいは支持スパンにかかわらず同寸を維持して用いている。これにより墨付け・刻み・建て込み・造作の手間、間違いは大幅に減少し、単純な矩形平面・構造計画と相まってバランスのよい理想的な構造体となる。
また造作材についても寸法を極力統一することで、拾い出し・部材の加工や造作の手間を減らし、部材同志の使い回しもよくしている。

5 設備は原則として安価な既製品を採用する
一般に低価格品と高価格品の実用的な差はほとんど認められない。また設備機器は住宅の寿命よりはるかに短いサイクルで交換が必要であることも考慮して、設備機器には安価なものを薦めている

◎「杉の家」項目別費用一覧(括弧内は項目ごとの全体に対する割合を%で示した値です。またこの価格は神戸地区の工務店による実際の見積価格で、敷地条件や工務店によって金額は変わります。)
木材代(運賃含む)・・・3479450円19%
仮設工事費・・・732040円(4%)
基礎工事・・・1269790円(7%)
木工事・・・5319610円30%
屋根工事・・・961540円(6%)
樋・板金工事・・・255680円(1.4%)
タイル工事・・・45000円(0.24%)
左官工事・・・414940円(2.3%)
アルミ製外部建具工事・・・1092280円(6%)
内外木製建具工事・・・480000円(2.6%)
塗装工事・・・8640円(0.04%)
設備工事・・・2781050円(15%)
諸経費・・・1322100円(7.3%)
総計:1816万2120円(税抜き


この見積金額を同規模の一般的な在来木造住宅と比べると、特に差の大きな項目についてみれば、
杉の家:一般的在来木造の比で;
木材代を含む木工事・・・49%:37%
屋根工事・・・5.29%:4.15%
基礎工事・・・6.99%:4.59%
設備器機を含めた給排水電気ガス設備工事・・・15.31%:20.82%
となっており、杉の家は一般的な在来木造住宅と比べ木工事・屋根・基礎といった
家の基本をなす工事に30%以上多くコスト配分し、逆に設備工事には26%以上少なく配分していることがわかります。

 屋根・軒の出

小屋組には緩い勾配の「登り梁構造」を採用することで深い軒の出にもかかわらず軒先が室内側からの視線を妨げるほどには低くならず、屋根構面が水平に近くなるため建物全体として高さを抑えることができ(=台風対策)、屋根重量を軽減されています。(=地震対策)

また野地板に杉の厚板(厚み40mm)を使用することで登り梁のピッチを6尺(1818mm)まで飛ばすことができるため、一般的な和小屋に比べて仕口数を大幅に減らすことが可能となり(=コストダウン)、さらには登り梁/棟木/桁等の部材がすべて渡りアゴで組み合わさることで強固な小屋組となり、その端正な美しさを家の内外から見ることができます。

野地板はその厚み故に断熱性能あり、石油化学製品系断熱材(新建材)等の断熱材を使用することなくタルキなどの下地材も不要となり、木の材積こそ増えるものの工事の合理化が計られコスト的には相殺されます。

また雨量の多い日本では昔から「軒は深くとる」ことが大切であると言い伝えられてきました。「庇(ひさし)」と書いて「庇う(かばう)」と読むことからもそのことがうかがえます。

「シンプルな杉の家」では軒の出を十分にとることで雨から外壁を守り、夏場の直射日光が室内あるいは南側開口部前の地面を熱することがないようにします。
物理的あるいは法的な制限がない限り南側に1.8m程度の軒の出を確保するようにしています。
(参考:南中時の太陽高度/夏至:約77゜、冬至:約31゜)

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外壁は焼き杉板に漆喰、軒の出は1.8mを確保しています。
焼き杉板は杉板の表面を焼いて炭化させることで撥水製が高められ極めて腐りにくくなることでほぼメンテナンスフリーとなる理想的な外装材です。
一般の外壁では有害な塗料を10年おきに延々と塗り続けるのですが、、、、

 土壁・左官 Plastering

土壁は「土に還る」ものでありこれほど環境に対しローインパクトな壁工法はないといえましょう。また適切に施工された土壁は地震に対して粘り強く抵抗し優れた蓄熱性能により室内環境を安定的に保つものです。

土壁は荒壁のままでは土がボロボロと崩れていくため中塗り仕上げやさらに漆喰塗り仕上げと塗り重ねていきます。中塗りの色はたいへん落ちついた色味となりとくに寝室にはおすすめです。

漆喰塗りにすると室内はかなり明るいイメージになりますが壁に何かを貼ったり留めたりしにくいため、一部の壁を板壁にすることも検討されるとよいでしょう。

ちなみに土壁の家の室内の空気は「柔らかい」感じになります。

土壁はその性能を十分に発揮するために;
・十分な壁厚
・下地の竹小舞の適切な施工(編み目の間隔)
・使用する土の十分な熟成時間
・十分な量の稲藁、すさの使用
・施工時期への配慮
等が重要になります。

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中塗り仕上げ
nside of the house 'Air' will be soft compared to that of wooden wall.

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寝かせている土
'Earth aged for a few months'
Rice straw fermented and will serve as an adhesive,

壁は小舞とよばれる細い竹(竹の育たない地域以外では杉等の木材/地域でとれる材が使われます)を格子状に組み、縄で編みこんだ骨組みに藁を切り混ぜて発酵させた土[粘土]を塗り、ひび割れ防止の繊維を塗りこんだ伝統的な壁の下地を作ります。

The walls are built in a traditional method in which fermented earth with chopped straws mixed is applied to a structure constructed from bamboo and ropes, which is called‘Take Komai’.

子供も一緒に荒壁塗り

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左:竹小舞を編む職人 中・右:団子状に飛び出している

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'Making a rope from 'a rice straw'
The same work is seen in the rice-producing area of all over the world.

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Weaving the bamboo net'
Use a bamboo which'd be cut in a bamboo grove nearby in apropriate season(depending on the moon) and dried for a couple of month. The size of bamboo bar depends on the thickness of the wall.

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 杉厚板の壁/板倉又は杉落とし板工法

厚さ3センチ以上の杉の厚板を柱に切った溝に落とし込んで壁を作る工法で、厚板の表面をそのまま室内側の仕上げとし、間柱と厚板の蓄熱性・断熱性で断熱材を省略できる。

また特筆すべきはその調湿性能で夏場等湿度の高いシーズンには窓を閉め切ることで室内の湿度が下がるのでエアコンに頼らずとも快適に過ごすことができます。(雨戸も閉めるとさらに効果的です。)

この工法は木材価格が異様ともいえるほどに下がっている今でしかできないと考えてよいでしょう。杉厚板の家の室内の空気は「乾いた」感じになります。

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厚み4センチの杉板を1・2階共に採用し、1階の天井は2階の床板の裏側が兼ねています。
杉の床板はナラや桜等の広葉樹の床板と異なり柔らかいため膝への負担が少なく冬場でも冷たくならず、梅雨時でもサラサラとした心地よい質感を楽しめます。

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 お施主さんの感想
お施主さんによる入居後の住み心地についての報告です。

「甲陽園の家」猛暑の夏の感想。
「嵯峨野の家」
「西宮名塩の家」
「枚方の家」

 架構

軸組架構設計においては間取りと構造の整合/一体化を高いレベルで実現させるのが重要です。

渡り顎(わたりあご)とよばれる仕口を用いた工法は仕口部分における木材の刻み方として無理のないもので、一般的な十分な部材断面寸法をもたない通し柱工法のような仕口での通し柱の破損→修復至難とはならず、大地震による大きな変形後でも建物の再利用をしやすいという大きな利点があります。

戦後の木造の主流になった「短ホゾ+金物」による仕口では材の乾燥収縮に伴って緩くなったナットを締め直す作業が必要となりますが、現実には肝心な場所のナットは隠れていて締め直すことができず、仕口内部での金物の錆の問題も避けられません。大地震時には短ホゾ故に仕口内部におけるホゾによるめりこみ耐力が期待できず、細くて堅いボルトによるめりこみは割裂しやすい杉材にとっては好ましくありません。

こうしたことがあるにもかかわらず「大壁工法」「単ホゾ+金物」(多くはプレカットによる)が普及してしまったのは、大壁では構造材が見えないので梁に極端に細い材を使ったりする
手抜きが可能であり、金物に頼る簡略化した仕口故に構造材の刻み賃が安く建築費を下げられるからです。

一方、金物を用いない長ホゾを用いた仕口では地震などの短期的な外力に対してはまず耐力壁が抵抗し、続いて仕口がコミ栓と部材同志が互いにめりこみ合いながら粘り強く抵抗するという二段階の破壊モードをもちます。この粘り強さのお陰で、変形量は大きくなるものの躯体そのものの損傷は最小限に抑えられ、例え家が傾いたとしても立ちを直して壁を修復することで再び住居として使用可能となるのです。

将来的にはコミ栓を取り去ることで構造材はすべて分解できますから移築などの再利用も可能です。

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墨付け・刻み・継手・仕口・木組み
Marking / carving / coupling / joining / timber framing

「継手」'coupling' : 部材を長手方向につなぐことconnecting similar parts
「仕口」' joining' : 他の部材との接合 connecting dissimilar parts
「墨付け」‘Marking’: the process of using ink to draw coupling and joining points
「刻み」‘Notching’: using carpentry tools for performing processing according to the marking
「木組み」‘timber framing’
「建前(棟上げ)」: assembling the notched materials

追っかけ継ぎ
Look at the detail of the joint of the beams.

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4本の材が1本に継がれる。
Four beams are connected to form a single 17m long 'Keta'(digit)

and then fly to the air...

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石場だて/伊賀の家

断面が統一されているシンプルな架構なため同じ仕事が繰り返されることでミスも減る。

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