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中村茂史一級建築士事務所

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間取りの考え方

 
 たいていの家・マンションの間取りは玄関ホール・廊下・階段が空間的にひとつにまとまっていて、そこから各室につながっているだけです。つまり全ての部屋が袋小路になっており、居間が特に広くない限りは家の内部空間として広がりや奥行きを感じにくいような家になるわけです。

 
しかし例えば階段室を家の真ん中においてその周りをグルリと回れるようにすると不思議と狭苦しさが軽くなり、人の歩く道筋(動線といいます)に回遊性ができて暮らしやすくなります。(図参照)

 
 また食べるところ(食の間)・寝るところ(寝間)・お風呂といった生活の基本的な場所は同じ階にまとめるのが断然暮らしやすいです。うまくまとまれば暖房器具も一つで済みます。

 というわけで「シンプルな杉の家」では各部屋の有機的なつながりを大切にし、なるたけ1階で生活できるようにまとめています。そうすると2階は子供達や家族の趣味や納戸のスペースになるのですが、面積的には1階の方が2階よりも広くなるのが普通で、建物は総二階建てではなく下屋のあるタイプになることが多いです。

 玄関は南にとると貴重な南からの採光をそれだけ居室にとりこめなくなるので勿体ない。逆に北側に玄関をとる方が居室への採光が有利になり、冬場の暖房費(エネルギー)も節約できますからバカにできません。廊下はなるべく短くしたいのですが、その片側でも物入れをとれば廊下を納戸的に活用できます。

・・・暮らしやすい空間のつながり方
上の図は各部屋の理想的なつながり方をあらわしています。
実線部分は隣接しているか廊下でつながっていることを示しています。
玄関や階段はこれら廊下、あるいは「食の間」に組み込まれるイメージです。
このサークルが維持されていれば暮らしやすいのですが、サークルを玄関に分断されないためには玄関を食の間にくっつけるようにしたり、玄関が別の二部屋にバイパス状につながるようにします。

<北入りタイプ>

<南入りタイプ>

図左上:「回れるプラン」の例。
階段を中心にくるりと回れるようになっている。理想のサークルが維持されているが南玄関のため寝間と食の間が分断された。
図右下:左上のプランと基本は同じだが玄関が北入りで分断が問題とならない。

2階は間仕切りなしのワンルーム
個室というのは?です。戦後一挙に壁で仕切られた個室が一般的になりました。しかしどうもこの個室文化?はうまく消化されていないように思われます。

欧米文化圏ではそもそも個室は寝る時間以外は使用しないものという暗黙のルールがあるものです。

中国に「小人閑居して不善をなす」という諺があります。

やはり子供の小さい間は眠る空間くらいを仕切る程度にとどめておくのがよいように思われます。食堂や居間をただご飯を食べてテレビを見るだけの場にするのではなく、勉強や作業・遊びの空間とすればいいと思います。

このような間仕切りの変化に対応するためにも初めは2階は間仕切りなしのワンルームにしておくことをおすすめしています。

間取りの打ち合わせ
「間取りの作成」はシンプルな杉の家のように仕様がほぼ決まっているような設計では最も大切な部分です。間取りは生活をおおきく決定づけ、なおかつ構造と密接に関連しているからです。
これに比べて「設備」は家に取り付ける「部品」のようなものです。何年か経てば取り替えるものです。

「シンプルな杉の家」の設計打ち合わせでは「間取りの作成」の大半のエネルギーを注ぎます。反対に「設備の決定」には殆ど時間をかけません。

電気のスイッチやコンセント位置などはこちらで提案しますが、キッチン・浴室・洗面所に使用する設備機器はお施主さん自ら決めていただくことを原則としています。

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