兵庫県西宮市仁川町
いでい建築事務所・出井正夫氏に依頼して 息子が住宅を建築することになった。 私は建築士であるが既に引退しており、かつて交流があった「1級建築士・出井正夫」を息子に紹介した。 この時は私の中では、誠実で信頼できる、長い付き合いの、真っ先に依頼すべき建築士であった。 他の人ではだめという訳ではないが、誰よりも最も旧く長い付き合いを優先した。
彼を知ったのは1985年頃で、元同僚の紹介で、いつも笑顔を絶やさない好青年であった。 誠実で温厚で優秀な建築士であった彼が、1級建築詐欺師に変貌していたとは知る由もなく想像もできない。
当時、私は建築設計事務所を開設して間もない時で、彼は設計事務所勤務、図面作成のアルバイトをしたいと言うのでお願いした。 繊細な女性的な描線で、手直しが少ない図面であった。
アルバイトではあるが当時の外注金額でお願いしたつもりである。 求めているのは働き方ではなく成果品であり、請求金額を値切ったことはない。
アルバイトは勤務終了後の作業なので設計期間に余裕があるものをお願いした。 恩着せがましく言うのではなく、恨まれる覚えがないのである・・・が人の気持ちである、聞いてみないとわからない。
15年間ほど仕事を手伝っていただいたが、双方の日常に変化が生じ疎遠になっていた。
「何故自分で設計しなかったのか。何故現場監理に行かなかったのか。」と設計を知らない人には言われる・・・
だが私は引退して15年になる、そんなにたやすい仕事ではない。彼に依頼したからには、私が決定し出井氏に設計責任を負わせることはできない。 依頼したので私は口出しをしない。要望があれば了承を頂く。当然のルールである。
11月はじめ、設計打合せのため15年振りに再会した。変わらぬ風貌と笑顔であった。
11月19日 設計打ち合わせ。出井氏が計画案を提出。 耐震強度は「耐震等級・3」での設計を依頼した。
「耐震等級・3」とは・「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称「品確法」による規定で、建築基準法に定める地震力の1.5倍の力に対して設計する。
「建築基準法」の耐震強度では、大地震時に被害が生じ建て替えが必要なのに対し「耐震等級・3」は部分的な修理は必要であるが住み続けることが出来る家である。
「建築基準法」を満足しているから良いという旧来の発想は「品確法」が存在しない時代ならともかく大地震が頻発する現在の発想ではない。
設計から訴訟終了まで多くの嘘があった。 ここからはそのことを中心に、主なものを時系列で記したい。
嘘の頻度がわかるように日付を記した。 全てを書くと理解し難いので、次項の工事関連の事件と分離して記述した。
翌年2月6日 出井氏からの連絡 「朗報です。田中工務店と建築費の話つきそうです。柱材は桧の無垢材でコストは変わりません」
唐突でありがたくは思はなかった。 だがこれが仕掛けられた罠と気付けるはずがなかった。
3月19日「建築確認申請書」交付される。 当初の計画では着工時期である。 予定通りにまとめるのが設計者の力量である。 まだ日程には余裕があり、これが知人に依頼する難しさである。
以下は「耐震等級・3」の設計申請である。 ・3月21日引き続き構造性能評価申請(耐震性能・3)を行います。
・3月22日本日性能評価申請を提出します。
・3月23日昨日性能評価申請しました。3月中の決済の予定です。
・3月24日・図面差し替えます。性能評価は先日調整文で・・・
だがこの21日〜24日の報告は全てが嘘で、申請書は5月21日の受付であった。 何故申請済証を受領しなかったのか、出井氏を信頼して依頼したからであり、各工事の完了検査、工事監理に必要だからである。 建築確認通知書等は工事現場で、建物がそれらと一致するか確認し、工事監理報告書を作成し、建物完成後に建築主にお渡しする。
参考のために書きますが、皆さんは住宅を購入した場合や建築した場合は、登記完了後、建物引き渡し時に必ず受け取って下さい。 申請者は建築主であり、申請代理人の建築士が申請手続きを行っているのです。 建物完成後は建築主が保管するもので、建物売却時に必要です。
4月、建築会社を知らないか、と出井は私に尋ねた。銀行物件で見積もりを急いでいると言う。1社紹介したが金額が合わなかった。
事件後に紹介した会社に聞けば「どの社でも到底出来ない予算です」 私が工事契約解除をした場合、工事を引き継ぐ工務店があるかの調査であったのだろう。 そこまでやるか、と思うと同時に無関係な者の手を煩わせるとは・・・
5月22日
、5月23日 基礎版の構造計算を依頼された。基礎版の鉄筋の配筋量の計算で、作用する力に対して必要な鉄筋の量を算出するのである。 性能評価申請書に添付と連絡があった。計算をしメールで送ると「早速提出します」と2日続けて連絡があった。
嘘であった。自分で作成した計算書を最初に提出していた。計算結果は同じである。 私はまだ計算書を審査中と思い、現場には行かなかった。その間に表層地盤改良工事が終っていた。
私を現場へ行かさないための工作であろう。出井氏からこの指摘に否定はない。 着工は3月中旬の予定であったが5月になった。梅雨時期になる様に出井が多くの工作を行ったのであるが、詳細は複雑なので割愛させて頂く。
「出井さん、何かを企んでいる」 「そんな人じゃない」 「・・・そうだな・・・個人の依頼は初めてかも知れない」 このころの私と妻との会話である。 何を企むことができるのか・・・何も思い浮かばない。
6月に400万円恐喝事件に連なる田中の電話があり6月末に上棟した。 7月9日に400万円恐喝事件につき会合した。(次の項で詳しく述べます)
この会合後には、出井と田中が共謀した事件と確信をしたが当分知らぬ顔をしておくことにした。 まだ出井には仕事をしてもらわねばならない。 出井を解任通知した後の、各種書類の引き渡しを受けるまで旧知の出井さんでいてもらわねばならない。
7月13日 ・今後の申請書、報告書は私がまとめます。(出井がまとめなければ誰が行うのか) ・「工事管理報告書は17日に提出します」
(コンクリート、鉄筋の強度試験成績書など21項目の必要書類である。)
何もまとめていないし、提出していなかった。
7月14日 ・「ガラスルーバー窓を上げ下げ窓に変更可能か」 連日の嘘である。 当初から「上げ下げ窓」である。 可能かどうか設計者が私に聞くことではなく、変更しなければならない理由を説明しなければならない。
田中が「設計変更があった。工事が遅れた、工事費が増額になった」と騒ぐため変更があったとしたいのである。 見積書は当初から「上げ下げ窓」になっており、変更などない。
7月15日 ・出井氏より基礎梁の写真撮影を依頼された。 昨日撮影できたのにしていない。
それよりもまだ撮影していないことに驚いた。床の下地合板が施工済で撮影出来る場所は玄関周り、浴室とに限られる。
工事写真を撮影していないことを印象付ける工作であったと11月に気付いた。なぜなら基礎の工事写真が手抜き工事で撮影できないので、工事の全てを撮影をしていない印象を与えたいのであることは間違いない。 「この写真は17日に検査機関に提出」と3回連絡があったが提出していなかった。
このことは、建築基準法に基づく検査済証を取得する気が全く無かった、即ち、最後まで工事をする気が無かったことになる。 検査済証が無ければ銀行融資を受けられない。
7月16日 「ホールダウン金物大き目で取りついています」 これも事実と逆で耐力減である。
ホールダウン金物とは耐力壁が地震力を負担した時、接合している柱が浮き上がら
ないように補強する金物である。 耐力不足は建物倒壊につながる。 私が現場で1部が図面と違うことに気付いたから嘘で逃れたかったのである。 計算間違いで変更、よくあることで私が経験者故の理解でまさか変更され耐力が減少しているとは思いもしない。 訴訟の争点の一つである。
・「写真、明日提出いたします」 ・・・何も提出してない。 8月2日 工事請負契約を解除
8月16日 私は自身を工事監理者として検査機関に登録し、検査機関で3月21〜24日の「申請します、提出します」は全て嘘であることを確認した。
性能評価申請において、柱補強金物は契約図面とは違う内容で申請していた。 つまり、契約図面とは違う内容で申請し「設計変更があった」と田中が騒ぐための変更である。
後日、設計変更は審査担当者の要求だとの嘘が追加された。 申請書を提出していたのが救いである。 もっと悪なら「申請しました」と言って、申請しない。
この直後に、出井氏を工事監理者から解任した。
8月23日 工事契約解除の3週間後である。
私の自宅近くの駅喫茶店で、出井より工事監理者としての業務を引き継ぎ、工事監理業務に必要な書類、工事写真などを受け取った。
分かれ際に出井に言った。
「人の信頼を裏切った者はどうなるか。日々のニュース、自分の周りを見れば分かるだろう。待っているのは転落人生だ」 「うん」と小さくうなずいただけであった。。 この地に図面を届けに来た5月、そして今日、近くのホテル建設工事現場へ監理の仕事があって来たついでと、嘘にからめないと気がすまないようである。
出井氏から提出された申請書副本、交付書など図面、書類を点検したところ、私が検査機関で調査したのと同じ結果を得た。
10月9日 出井氏より地盤改良工事深さは1.0mでその工事に立ち会ったと言う書類、地盤固結剤と別府建材店が発行したアンカーボルトの納品書各1通が届いた。
納品書は2通とも捏造書と判断し検査機関には提出しなかった。 その根拠は
1. 納品書が連番であるので必要に合わせ急遽作成した。 2. ホールダウンM16-600が現場と不一致。
田中工務店と別府建材店とは約1.5kmの距離。車で5分程度。
なのに基礎工事前にホールダウン金物の納品は通常あり得ない。 3. 改良剤の納品日が施工日の翌日である
アンカーボルト納品書

地盤改良固結剤納品書

2022年12月21日裁判所にて証人尋問。以下の出井の発言は全て嘘である。その説明は長くなるので省略する。
・地盤改良厚さ1.0mは50cmの間違いです。 ・地盤改良工事に立ちあった、改良工事を行った。 ・柱補強金物図は着手直前に田中氏に渡した。 ・私は守口市でよく仕事をしている。 ・地盤改良工事の進行について私と数度メールで私とやりとりしている。(着工の連絡もない。工事を行っていないのであるから)
出井氏が納品書とともに「地盤改良工事に立ち会った」との書面を送ってきたのは、工事写真を提出できないので、工事監理者の自分が立ち会ったと言えば、検査機関は写真がなくても了承すると考えたのでしょう。 私は工事写真が無く捏造が濃厚な書面を提出しませんでした。
出井には 「検査済証の交付を得られなかったら全て貴方の責任だ。裁判で争う必要もない。損害は私が工事費を工面し、その贈与税、向こう15年の各種保険料・・・」 と通告した。 その後、検査済交付には協力していただいた。 訴訟で争うには検査済証が無い方かよいが、現実的にはそうはできません。
私はこの時期、10月には、地盤改良工事が行われていないとは思ってもいませんでした。 工事費がリスクを犯すほどの金額ではないからです。 リスクを犯しても成功の自信があったのでしょうか、現に成功し、表層地盤改良工事は行われたとの判断を彼らは得たのです。
証拠と出井・田中の証言が一致するのがその理由とされました。 捏造書に合わせた嘘、または嘘に合わせた捏造書で一致は当然です。
私たちの証拠と証言は一致したとは思われなかったのですから仕方がありません。 私は構造設計技術者の誇りにかけて虚偽の書面提出や嘘を一言も言ってはいませんが、その結果ですから。 法治国家といっても、手続きのことで、実際は担当する裁判官による「担当者判断」であるというのが私の印象です。 その判断の根拠が、どの法令の第何条であると示されたわけではないのですから。
出井氏にはこれら以外にも設計期間中に些細な嘘が日常的にありますが煩わしいので省略します。
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