弱肉強食、しかしライオンも飢えるのである
みなさん誤解していらっしゃる。
弱肉強食とは「“強食”となれば なんでも思い通りになって飢えることはない」と……
しかし、ライオンも飢えるのである。自然を紹介する番組でご覧になった方も多いと思う。食料となるはずのヌーの群れがやって来なくてガリガリに痩せて息絶え絶えのライオン……
「やって来ない。」のであれば やって来るまで持ちこたえられれば良い。しかし、ヌーが死滅してしまっていたとしたら……
飢えたライオンは悲劇である
身軽なヌーは食料を求めて旅立つことが出来る。しかし、ライオンには縄張りに縛り付けられ、そこを動けないのである。食料を求めて他のライオンの縄張りに侵入しようものなら攻撃を受けてしまう事だろう。
かと 言って「今日から 草を食べます。」と 言う訳にはいかないのである。ライオンは草食動物ではない。食べたところでそこから栄養を摂ることは出来ないのである。
経済の「弱肉強食」
現代の経済は「弱肉強食」だと 言われる時がある。「経済的な弱者は常に喰われる存在であり一方的に強者に従わなければならない」と 言う事なのだろう。
しかし、「自然界の弱肉強食」と「経済の弱肉強食」には大きな違いがある。
「自然界の弱肉強食」の“弱肉”の生きる糧は“自然が供給する草”である。「お天道様が草を育てている。」のである。草が戻ればまた“弱肉”の数も また回復するのである。
その過程に“強食”は関与しないのである。“強食”が何もしなくてもヌーの数は回復できるのである。それ故、“強食”の飢えもまた癒える事もあるのである。
しかし
「経済の弱肉強食」の“弱肉”の生きる糧は、“強食”が支払う正当な労働の対価なのである。
いや、直接 雇用している人の事ではない。協力会社、下請けや資材を納入してくれる業者さんと 言った関係するすべての人たちに正当な支払いをしないといけないのである。
“強食”が糧を提供しなければ“弱肉”は飢え、弱っていくのである。
飢えるライオンはフィードバックなのである
ライオンがヌーを狩り過ぎて数を減らしてしまうことも、ライオンを飢えさせる一因である。ライオンも飢えれば数を減らすのである。
しかし、そうなればヌーが生き延びやすくなる事であり、ヌーが数を回復させ易くなるのである。それは自然界のフィードバックと言えるだろう。
もう既に飢餓状態なのではないのか?
「そんなに“弱肉”が飢えているのなら その数を減らし、“強食”の数も減りその権力は既に弱まっている筈ではないか?」
いや、グローバル化された“強食”には外部から糧が流れ込み飢える事がなかった。それでフィードバックが効かないまま、拡大期のグローバル経済の
経営論、経済論が定着してしまったのではないだろうか?
しかし、寄せる波もあれば、引く波もある。アメリカを軸に欧州、日本を含め 今まで“強食”であった国は既に
グローバル経済の引き波に差し掛かっているのではないか?
それなのに拡大期の経済論を「さらに強く進めれば回帰できる」と固執する事で かえって景気を回復させることを困難にしているのではないか?
“強食”が利益を分配する事がなければ“弱肉”は死滅するかもしれないのである。
“強食”が経営グローバル化で利益を享受する一方で……
その損害を最初に被るのが“強食
(先進国)”の中の“弱肉”である。人件費の安い国の企業とと競合させられ、正当な労働の対価すら絞られ、飢えているのである。
いや、糧の供給そのものすら失っている事もあるのである。大手の企業が部品の供給や製品そのものの製造を海外に依頼しているのである。
それでは いくら経営論を強く推し進めても“弱肉”の飢えが癒されるハズもないのである。
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自分が強くなれば……
ライバルを上回れば……と、拡大を続けることが勝ち残るための最善の策だと思われてきた様です。
先進国では「経済の成長が重要である。」と 言うのが共通の認識のようです。しかし、経済とは永遠に成長できるものなのでしょうか?
いえ、そもそも、成長
(拡大)とは時代時代の先進国……工業製品を造る国からの見方にしか過ぎなくて、モノを一方的に買わなければならなかった国から見れば縮小だと思います。
第一、「ライバルを上回っていれば良い。」と 言うのは経営幹部が自分自身の評価を高める為の言い訳であって、経済全体から見れば…… お金の流れをずっと上の方から俯瞰して見ればマイナスの行為かもしれないと思うのです。
実は“経済論”と“経営論”は本来、相反するもので、「特定の条件がたまたま重なった時だけ」
(例えば“高度経済成長期”とか)連動するだけなんじゃないかと予想しますが いかがでしょう。
(…… ん?、たしか「NHKスペシャル」で「『高度経済成長』とは様々な条件が重なった時、一回に限って可能である。」と 当時の政府の偉い方が論理的に解明されていた と見たような気が……)
まぁ、「大企業が
存続されなければ、日本の経済回復は無い。」と大企業を優遇したけど、大企業が存続されても「後のことは知ッタ事じゃナイ」と放ったらかしになっているんじゃ経済回復なんてある訳ないよね……
グローバル化された経済には……
新たな経済論を打ち立てる必要があるのではないでしょうか?
エコノ(ミー)=スフィア論と 呼ぶべきものが必要だと思うのです。
バイオスフィアという考え方があるそうですね。生命とは個々が独立して存在しているのではなくて、お互いに影響しながら全体として成り立っている。
経済も同じで個々の企業が独立して成り立っているのではなくて全体として成り立っているのではないでしょうか?
強者が利益を独り占めしてしまうと、弱者は生きていけなくなる。しかし、それは弱者だけの問題ではなくて回り回って経済全体が活力を失う。現在の景気停滞はそんな風にして起きているじゃないかと思うのです。
昔、生命球というものが流行ったことがありましたね
ガラスの球体に幾つかの動植物が閉じ込められその中で一つの世界が完結していて、その閉じられた世界だけで生物が生き続けることが出来ると言う物。
しかし、あるマンガで その中の一匹が食べ過ぎて生命球が死んでしまったという一コマを見たことがあります。
(元ネタは士郎政宗先生の漫画「ドミニオン」。本当に1コマです。)
経済も同じで一つの強者が拡大を続け周りに分け与えることをしないと地球経済が死滅してしまうかもしれません。
(まぁ、イッペンくらい死滅してゼロからやり直した方がいいかもしれませんけどね〜)
現在、“経済成長”と考えられているものは、それまで、村や町、国、地方と言った範囲で回っていたお金を強者、強国が無理やり吸い上げているのに過ぎないんじゃないでしょうかね。
しかし、ここにきて拡大は限界点に達してしまったのではないでしょうか? つまり、地域で回っていたお金は先進国に吸い上げ尽くされてしまった。
「自由貿易が正義である」と 言うもの果たしてそうでしょうかね? それは あらゆることに格差のない事を前提にした理想論で、格差のある社会でそれを実行してしまって歪みが噴き出しているのが現在の国際社会でしょう。
いえ、自国第一を掲げる某大統領を支持する訳じゃないですよ。今まで自由貿易を主張していた先進国が関税を上げる事が許されるのは「富を全部吐き出してから」です。
(あぁ、日本も相当痛手を負うなぁ。)
エコノ=スフィア論とは 「町とか地域とか国と 言った小さな範囲の経済
(小エコノ=スフィア)がフラクタル的に積み上がって、バランスを取りながら形成し、地球全体を一つの経済域
(大エコノ=スフィア)だとみなす考え方」です。
で、その内の一つでも不調をきたし、バランスが崩れると地球全体の経済も連鎖的に崩れると……
「エッ、僕?
僕はシロートに過ぎませんからね 勝手に妄想しているだけです。『論』と 言えるだけのシロモノは持ち合わせていません…… 悪シカラズ。」
今の、世界を見渡すと、“とある有力な一つの小エコノ=スフィア”が、自分達だけが「タラフク食えれば良い」と、
自らを太らせ続けている様に見えます。さぁ、結果はどうなるでしょうね?
獅子身中の虫と 言う諺もありますしね
爪を研ぎ、牙を磨いて外に対しては無敵のライオンも 体の内側を労らなければ弱ってしまうのです。
“身中の虫”なんて書いてしまうと寄生虫やウイルスを連想して「害をもたらすモノならやっつければ良い。」と 言われてしまいそうですが、腸の中で活動して体を良くしてくれる“菌”もありますからね。
“体の中”と 言う言葉をどう捉えるかです。一企業だけを“体の中”と 捉えるのではなくて、「自分の会社に部品を納入してくれている会社」や「自分の会社がある地域」も“体の中
(小エコノ=スフィア)”だと捉えれば、“労らなければならない”と 考えることは容易い事だと思うのですけどね。
そして、もっと“大きな体の中
(大エコノ=スフィア)”の事も見渡して考えないと……
もし、“弱肉”が死滅してしまったら……
その時は、工業による経済が破綻してしまう と言う事でしょうね。
そして、最後の最後で強いのは農家さんかもしれませんね。
母方の祖母は戦争で夫を亡くし、四人の子供を抱え戦後、相当 苦労されたようです。
「戦後、食べる物がなくて苦労した。」とは テレビでよく聴く話です。
しかし、母からは「食べる物が無くて苦労した。」とは聴いた事がありません。
農家であった母の実家では、少なくとも「食べる物を手に入れられなくて困った。」と 言う事はなかった様です。
つまり、経済が破綻したとしても…… 工業の拡大に依存した経済が破綻しても実際に作物を作っていられる農家さんは食べるモノには困らないと言う事だと思います。
経済的に成功した農家さんになるのは
ハードルが高いかもしれませんが、収入が少なくて食材が買えないなら、全部とは言わず一部でも自分で作っちゃえば良いんじゃないですか?
(……自分では作りもしないのにムセキニンな事を言う奴……)
逆転の弱肉強食
今、「自分は“強食”だ。負ける訳がないだろう。」と思っている人たちに言っておきます。世の中 いつ“強食”と“弱肉”が入れ替わるか判りませんよ。
今、日本は工業中心に動いていますが、工業がコケたら食料を直接作っている人達こそが“強食”になる事でしょう。
「日本の工業がコケる事なんてある筈ないだろう。」と思っているでしょう。そんな事、判りませんよ。
工業とは買ってくれる人がいて 初めて成り立つのです。消費者を蔑ろにしていると本当にコケますよ。
えっ、「いつ、消費者を蔑ろにした!」って? 自分の利益だけを増やすために立場の弱い人達を買い叩いているじゃないですか。
消費者は労働者で、労働者は消費者です。
2019/08/22