権利のお金と労働の対価


 今の日本では“権利”と言うモノが幅を利かせ、“労働”と言うモノが軽んじられている様です。
 「出資に対する権利」「著作に関する権利」「フランチャイズ チェーンに加入させる権利」「会計の仕組みの利用料」そういった“権利”ばかりが幅を利かせ“労働の対価”が蔑ろにされているように思います。でも、それが経済停滞の一因ではないかと思うのです。


特に権利を管理するだけの人たちが……

幅を利かせているのは如何なものでしょう。労働や思考の伴う権利は良いのです。労働や思考が無駄にならない様に適切に判断されるでしょう。
 しかし、管理するだけの人はそこから儲けが出れば良いのです。 何が言いたいのかというと、日本音楽著作権協会のことです。

 音楽教室に対してまで著作権料を払えって!? ……どういう事? :- <
 著作権って 他人が勝手に著作物を使ってお金を掠め取る事から保護しようと言う事の筈ですよね。 音楽教室で教材として使うだけのコトなのに著作権料を寄越せって何なの?  『音楽を演奏したら即、著作権料をよこせ』と言う事が出来る権利じゃないと思うんですけどね。

 協会の人にとって著作物がお金を産んでくれればそれで良いのでしょうね。 ある作曲家氏が「自分が作曲したものは自由に使ってもらっても良いですよ。」言われていますが、著作権協会は一括りにして「売り上げの数パーセントを寄越せ」と言っていますからね。 作曲家氏のご好意は無に帰してしまうでしょう。
 「あの曲が演奏できる様になりたい。」と音楽教室に通い始められた人の中から次の音楽家が現れるかも知れないのにね。

 著作権協会の人にとって“個々の著作物”が守られなくても…… そしてそれが元で著作物が世間に広まらなくても、全体として売り上げが上がればそれでいいのでしょう。
しかし、それで著作物の権利が守られたと言えるでしょうか?

 えっと、マクラはこれ位にしておいて、本当に言いたい事はここからです。


株主はそんなにエライか?

 「そリャ。お金を出したんだから、エラいだろう。」って? ええ、出資されているのだから確かにエライでしょう。しかし、お金しか出していないんですよね。  「???」  ……だから、お金を出したところで“お金”が工場で働いて“製品”を作ってくれるわけじゃないですよね。  “製品”は工場で働かれている作業員さんが作られているのです。作業する人がいなければ製品なぞ造られる訳はないのです。つまり製品を造る上で一番エライのは 社長でもなく、会長でもなく、現場で体を動かして働く作業員さんたちなのです。ましてや株主などで有る訳はないのです。
 確かに現場で作業をされている方たちは、きっと会社の舵取りには大きく関わられる事はないでしょう。しかし、大企業と言えど第一線で働いていらっしゃる方々が売り上げを稼ぎ出しているのです。どんな偉いカリスマ経営者といえど それを差配しているに過ぎないのです。


ところが一番 発言権がないのが作業する人たちなのです

 逆に一番 発言権が強いのが、一番 働いていない株主なのです。「出資しているのだから、発言権が強くても当たり前だろう」って? そリャ、お金を出しているんだから それなりには発言権はあるでしょう。しかしですね、「会社の全てを決めてしまえるほどの発言権はあるのでしょうか?」 と問いたい。
 大株主が会社の経営権を得て、その会社の工場だとか 技術だとか大事な物を売り払ってしまって自分だけ利益を得て、“スッカラカン”になった会社を叩き売ったとしても一般の社員さんは止めることは出来ないですよね。経営幹部もどこまで抵抗できるか。所詮、社長なんて株主総会で決められるモノに過ぎませんからね。
 でもそれで一番 困られるのは生活がかかっている普通の社員さんでしょう。企業力をなくした会社に取り残されて、その先 どうやって生きてゆけと言うのです。……しかし、会社の行末には全く発言権はないのです。
 《株主の意向(“威光”ではない……)》が《従業員の総意》を上回っちゃいけないんじゃないですか?


一言で『社長』と言っても 色々じゃないですか

 某自動車会社に大株主の外国の自動車会社から派遣されて来た元経営者氏は、短期的な収益の増加を示して 破格の報酬を得ていたようです。しかし、“奇跡のV字回復をもたらした”と言われていた この人の採って来た方策は“絶望的なΛ字没落”を もたらしてしまった様です。はたして回復できるでしょうか?
 彼は値引き販売で売上げ高を伸ばし、新車の開発費を抑えて『利益を増やした』と株主から信任を得ていた様です。
 しかし、ブランド力や将来性は失ってしまった気がします。 欧州の高級スポーツカーと張り合える様な車があり、新しい考えの技術を取り入れて大ヒットしたマイナーチェンジ車はあります。しかしラインナップ全体を見渡すと、古くなって色褪せてしまってもモデルチェンジしてもらえないクルマばかりです。

 自動車マニアにはすごく心に響く技術が搭載されたクルマがあるんですけど、その技術は他のクルマに展開されていない様ですね。
 一般の人にはその有用性が理解されないから、「コストパフォーマンスが悪い」と切られちゃったんじゃないですかね。ゴー○さんに…… (あっ、言っちゃった……)
 自動運転には随分力を入れていらっしゃる様ですが…… 果たして如何でしょうね

 株主からの指名だけが社長を決めるのなら現場で作業する人たちに負担をかけてでも配当増や株価の上昇をもたらした人しか選ばれないですよね。社員さんから支持を得られていない人物でも……  普通の社員さんは「こんな人じゃダメだ」と思っていても、従わなきゃいけないし、ましてや下請け企業さんは何も言い返せない。


「スト権はあるだろう」って?

 スト権なんて在って無いが如しです。“ストの落とし所”なんて判らないじゃないですか、「本当の会社の経営状態」を知らないと……。 すご~~~く利益が出ているのに「これが精一杯なんだ。これ以上出したら会社が傾く」なんて経営者から言われたらそこで手を打つしか 仕方ないじゃないですか。(あっ、ごめんなさい。僕、“スト権”についてよく知らないので……  本気で団体交渉すれば、開示してくれるのかな? でも、それなら もうちょっとマシな世の中になっていると思いますけどね。)


製品が稼ぎ出したお金の分配率の問題ですね

 もっと製品を体を動かして製造したり、販売した人たちに利益を回さないと。それは完成品を製造したメーカー内部だけの話ではなくて部品を供給したり、資材を納入したりした企業さんの収支も含めてです。
 何方か完成品の売り上げの内『実際に体を動かして働いた人に支払われた割合』を計算して頂けないですかね。下請け業者さんも含めて……   過去に遡って比較すれば何か見えて来るんじゃないですか?
 この数値が『労働に対する支払いの健全性』を計るモノサシになるんじゃないですかね。


世の中 回り持ちです

 小さな企業ならいざ知らず、日本を代表する様な大企業なら自分たちがした“支払い”が“お客様”を作り出す事を忘れてはいけません。 個々の企業の業績は良くなっても社会全体のお金の流れが滞れば普通の人たちの生活は立ち行かなくなってしまうんじゃないですか? それでは世の中廻って行きません。 その証拠に現在、日本の経済は停滞しているじゃないですか。不景気の根源は貴方なんじゃないですか。
 「そんな事知ったことじゃない。世の中、弱肉強食だ!! 力があれば何をしても構わないだろう!!」って? そう思うのは貴方の勝手です。勝手ですが………   「ソれやったら『倒産しそうだ』って 社会(政府)に泣きつくナや」。


労働者に発言権を持たせようと言う議論もある様ですが……

十分ではないですね。労働者の代表が株主総会で発言権が与えられたとしても、会社の外部の労働に対しては効果がない。大企業から圧力を掛けられたら下請け企業は従わざるを得ない。下請け企業の内部でいくら労働が正当に評価されても その企業の売り上げが上がらなければ給料は上げようがない。


株を売り買いする目的が変わって来ているんじゃないですか?

 本来、株は配当を得る権利を得るのが目的だったのに、株を売り買いして差額で儲けるのが主体になって来ているんじゃないですか? だから、短期的な利益をもたらす経営者が重用されるのでしょう。そういった人は果たして「長期的な会社の行末」をどう考えていらっしゃるのでしょうね。

 配当を期待して株を買った人にとっては、「株を買った会社の行末」は十分に考慮しなければならない事柄でしょう。しかし、短期で株を売り買いして儲ける事ができれば良いだけの人にとって その会社の行末なんて『どうでも良い事』なんじゃないですか?  そんな人たちに会社の全権を預けていいものなんでしょうかね。

 「物言う株主」は大いに結構ですが、長期で株を持ち続けた人たちに限らないと…… せいぜい「物言いをつける株主」位が適当かと…… (解るかな~ 相撲の「物言い」に引っ掛けているんですけど…… えっ、「ソりゃ、遠いワ」って? 失礼を…… )
 株主の権限なんて せいぜい経営陣に説明を求める位でいいんじゃないですか? (えっ、言い過ぎですか? )


物言う株主たちは言うでしょう……

「自分達は企業価値を高めたんだ。」と……。でも、高めたから如何だと言うのです。「企業価値とは株価である」と言うのは貴方達の価値観に過ぎません。 株価が上がったからと言って、それで社員さんの給料が上がる訳じゃなし…… 普通の社員さんにとっての“企業価値”とは、働いた分の給料をキッチリ…… 出来ることなら タップリと支払ってくれるコトじゃないんですか?  ましてや 下請け業者さんなんて、上位の企業の株価を上げさせる為に酷い仕打ちを受けていらっしゃるんじゃないですか?


世界の利益のお金はほとんどアメリカに流れている?

 世界の富の半分は大金持ち上位10人が握っているのだそうです。そのうちの9人までもがアメリカ人なのだそうです。 それは権利のお金の殆どが最終的にアメリカに流れているからなんじゃないですか? 
 アメリカの貿易収支は赤字だと言われていますが、貿易収益に権利のお金って含まれているのでしょうかね。あっ、ゴメンナサイ、僕、その辺の事、良く知らないので……   でも そうじゃないとオカシイじゃないですか。貿易赤字なのにアメリカにしか大金持ちがいないなんて……

 世界各地で情勢が不安になっていますよね。それって「お金で買える“権利”」ばかりが幅をきかせて“身体を動かして製品を作った人の権利”が蔑ろにされているからじないですか?  それじゃ“権利のお金”とは縁遠い普通の人たちの生活がままならなくなってしまいますよね。
 要は 『株主様を領主とした新たな封建時代になってしまっていたんじゃないですか?


封建社会の問題点の根本は……

『支配される側の人間は、支配する側の人たちに異議を唱えられない。』事だと思います。 でも、これって“現代の雇われて働く人たちの環境”そのものじゃないですか。
 いや、昔の封建時代は領主も領地に縛られて、領民の生活も成り立つ様にしなければなりませんでした。領地が廃れてしまえば自分も困ってしまいます。
 “新封建時代の領民”はもっとひどい仕打ちを受けています。“新封建時代の領主”は“株を持っている会社”が危なくなればサッサと次に乗り換えれば良いだけの事ですからね。かなりタチの悪い領主です。

 「下から文句は言わせない」と言うのなら『文句を言わなくても済む』様にしなさい。自分だけラクをして、稼ぎを持って行ってしまって、「文句を言わせない」はないでしょう。
 でも、『人から文句を言われなくて済む』って相当難しいですよね。“今、起きている全ての事柄がわかっている”と言う前提があって初めて成り立つことです。“上の人”は『何でも解っている』つもりでも、『実は何も知らなかった』なんてよくある話です。そこ此処で聞きます。 人間なんて 理由が立てば“ラクな方”に流れていってしまうものです。自分が「真実だ」と信じていたことが“希望的観測に過ぎなかった”なんて事はよくある話です。
 そんな難しい事をしようとしないでも、ただ単に下の人たちの話をよく聞いておけばいいだけの事じゃないですか? それがフィードバックと言うものです。いえ、聞いたからと言ってそれを全面的に取り入れなければならないと言うことではないのです。 それが出来ないのであれば出来ない理由を説明すれば良いだけの事です。
 ところが 『説明できるほど上の人たちが理論を理解していない』のか『説明できない様な事をしている』のか、下の人たちが納得できないまま物事が進んでいってしまって、食い詰めているのが現状だと思います。

 ねぇ、これが実体経済の現実なんです。統計上のアレやコレやじゃなくて……。 これじゃ 経済が行き詰まってしまうのも当たり前でショ。
 一番の権利である筈の《労働の対価》が蔑ろにされているんじゃないんですか。



2020/10/20



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