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杉コラム

2 端材も活用! 吉野わりばし

吉野で始まったとされている割り箸づくり。もともと割り箸は吉野の「下市」というところで江戸時代に吉野杉で作る酒樽の材料の端材が捨てられるのを惜しんで考案され生まれたそうです。
 現在、吉野ではお箸は端材(木皮・箸木皮・背板などと呼ばれます)から作っています。一本の木をすべてお箸をつくるために伐るのではありません。建築用材として梁や板など製品を挽いたあとに残る箸木皮(はしごわ)が材料なのです。木一本を無駄なく使っていることになります。一部では森林破壊につながると考えられがちですが、実は国内資源の有効活用なのですね。
箸木皮
箸木皮
原木から梁や板など製品を挽いたあとに残る箸木皮。箸木皮がたまってくると、製箸所の方に引き取ってもらう。
あまり目が真っ直ぐに通っていないものや節のある部分は、箸木皮としては使えない。
製箸所
製材所から製箸所へ
東吉野にある竹内製箸所。
「天削」や「らんちゅう」などさまざまな種類のお箸がつくられる。小伐りや乾燥などの工程のあとは選別の作業がまっている。
箸づくり 今は機械で作られている割り箸だが、昔はこんな風にナタで割ってつくっていた。
ナタの先が少し重く作られていて、刃を振り下ろしやすくなっている。
木の目(冬目・夏目)にそって割る作業がむずかしいようだ 。
木のお箸いろいろ

製箸所を見学して、木のお箸にはさまざまな種類があることに驚きました。普段よく見る「天削げ」箸をはじめ、ユニークな名前や由来のおもしろいお箸などがあります。

 ◎ 天削げ箸

割り箸の天の部分を鋭角的に削ぎ落とし木目(杉、桧など)の美しさを強調しているお箸。 
上部(天井部)が削られている形状からこの名前がつけられたそうです。箸の上下を さかさまにするなという意味で、おもてなしに使われてきました。
料理を挟む部分だけは四面が面取り溝加工されています。

 ◎ 丁六箸
(ちょうろく)

角を取ったり、割れ目に溝をつけたりする加工が全く施されていないもの。
「丁度6寸」という意味で 18cmの箸を指すこともあります。

 ◎ 小判
(こばん)

割り箸の角の部分を削り 、使いやすくしたものです。頭部から見ると角を取ってあり、長方形ではなく小判型に見えるのでこの名がつけられています。

 ◎ 元禄
(げんろく)



元禄箸は、四隅を全て削って滑らかにし、割れ目に溝をつけて割りやすく加工したお箸です。木の分量をそれだけ減らしたことから、「元禄小判箸」とよばれるように。(元禄時代に幕府が財政窮乏のため金の量を減らした元禄小判になぞらえています。)また、箸の天の部分の切口が元禄模様に見えるところから、その名がついたとも言われています。

 ◎ 卵中
(らんちゅう)

木肌が杉の赤身で、形は面取りの”中広平箸”の「両口箸」です。千利休が安土桃山時代に、自ら茶道の探求中に、落ち着いた静かな姿を持つ箸として 考案したもの。千利休は、客を招く日には必ず朝、赤杉の四角の箸材を取り寄せ、客の人数だけ小刀で削り、両端を細く丸みを持たせ、軽く持ちやすく、食べやすい箸を作ったといわれています。

 ◎  利休
(りきゅう)

一本ずつばらばらであった、利休が考案の「卵中」を、明治末期に割箸として考案したもの。
中央を太くし、両端を細く削って面を取っています。
形状が二本くっついて 仲の良い夫婦のようである様子から「夫婦利久」とも呼ばれます。