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杉コラム

3 検証!吉野杉の強度測定

木材の強度をあらわす言葉に「ヤング係数」というものがあります。ヤング係数とは、材料の変形のしにくさを表す係数のことです。実際には、物体に加えた力(荷重)とたわみ(変異)の関係を示したものがヤング係数で、【E○○】と表示します。ヤング係数が大きいものほど同じ荷重を加えたときのたわみが小さく、強度が優れているといえます。
ex) 【E-70】<【E-90】

 なぜこのヤング係数が重要なのでしょうか。木材は天然素材であり、すべてが同じ強度を持っているわけではありません。また、樹種によってヤング係数はもちろん異なりますが、同じ杉は杉でも、その産地、挽いてからの乾燥方法などによっても強度は同じとはいえません。軸組み工法において住宅の寿命を作用する、もっとも大事な部材ともいえる構造材。木材を柱や梁桁などの構造材に使用するには、強度を確認することが重要です。

 吉野の杉は豊臣秀吉が築いた大阪城や伏見城にも使用されています。また、吉野のある奈良県南部でも「スギ普請」の民家は数多く残っており、柱・梁・桁にいたるまで、すべて地元の木、吉野の木でまかなってきました。
 一般的に木肌が「やわらかい」と言われている杉ですが、果たして構造材として「吉野杉」を使用したときの強度は、家を建てるに十分なものなのでしょうか?

 ここでは天然乾燥をした吉野杉・柱角のヤング係数を実際に測定、検証しました。

強度測定

 

試験年度 平成22年
 産地・樹齢 吉野産杉90年生~150年生
 断面寸法 120×120 (柱角)
 試験本数 150本
 乾燥条件 天然乾燥 (半年~1年以上)
 試験場所 吉野材センター

強度測定機種:飯田工業㈱
MGN-101(全国木材協同組合連合会 認定機種)スパン:3,600


測定結果


ヤング係数測定結果構造材として「吉野杉」を検証してみると、非常に粘り強く、強度に優れている材であることが明らかになりました。

 吉野杉曲げヤング係数のデータでは、E=90という強い数値のヤング係数が大半を占めています。これは、全国の杉の平均ヤング係数と言われているE=70という数値をはるかに上回る値です。
一般的に木材のヤング係数は、密度に比例して高くなります。奈良県吉野産の杉は、年輪幅が緻密で密度が高いので、ヤング係数も高い値が出るのでしょう。このことから、天然乾燥を施した吉野杉は他の産地の杉に負けない強度を持つ、梁桁や柱などに適した材であることがわかります。