縮小する経済キャパシティ


 新聞やテレビのニュースでは何かきっかけがあれば また好景気がやって来るかの様に言われていますが 本当にそうでしょうか? 僕は そうは思いません。経済キャパシティの縮小こそが不景気の本当の原因だと思うのです。だから何か刺激を与えたところで好景気などやって来ないと思うのです。


僕が言う経済キャパシティとは

 「その社会が一体どれ位の人を養う事が出来るか?」と言う事です。“単純な平均所得”や“就業している人の合計”ではありません。普通に雇われて働いている人に給料として支払われた総額が、いったい何人分の「ごく普通に生活していく為の給料」に相当するか? という事です。なんか ややこしい言い回しですね。でも、こう言わないと意味が伝わらないと思うのです。
 単純な平均所得では「特別高額な所得を得ている人」が少数入るだけでも釣り上がってしまいます。また、就業していれば それでいいというものではありません。現在の最低賃金では普通に生活していくには到底足りません。最低賃金に近い額で長年働いている方もいらっしゃいます。いえ、むしろ そういう人の方が多いんじゃないでしょうか?
 「雇われて普通に働いている人の給料の総額」が、いったい何人分の「ごく普通に生活していく為の給料」に相当するか?
普通に雇われている人には“役職付きの人”、“特殊な技能のある人”、“特殊な収入の得方をしている人」は含みません。ええぃ、いっそ “運良く一流企業に就職できた人”も省いてしまえ!。そんな人、日本の中では一部にしか過ぎませんからね。そんな人まで合計に含めると意味のある数字にはならない。
 「ごく普通に生活していく為の給料」の定義も問題ですね。まぁ、とりあえず物価を勘案して月25万円としましょうか(安倍総理は以前、男性の平均月収は50万円とおっしゃいましたが………)。「え〜、そんなに貰ってないよ〜」と 言われる方が沢山いらっしゃるのは承知しています。でも、現代の物価上昇を考えるとこれくらいないと苦しいと思う。いえ、これでも余裕のある生活には足りないくらいだと思います。
 で、その“日本の経済が何人の人を養い得るか”と言うのを計算し直すと一体どう言う数字が出て来るのでしょうね。どなたか計算していただけないですかね。


効率化を進めてきた日本社会は働き口を減らし続けてきた

 経済が安定期に入ると企業は効率化を重要視しました。伸びない売上の中で、利益だけは増やし続けようとすると経費を減らさなければなりません。ところが、この効率化というが「人の働き口を減らして来てしまったのではないか?」と思うのです。今まで三人でしていた仕事を二人で出来る様にするという事は 企業側から見れば経費を浮かせたという事ですが、社会の側から見れば一人分の給料の支払いを失ったと言えると思うのです。
 企業買収、事業の統合化、集約化、店舗の大型化。当の企業にとってはそれらは正解だったのかもしれません。ところが社会の側から見るとそれらは人の働き口が減らされていることにはならないでしょうか?


少なくなった働き口が低賃金を可能にしていた

 働き口が減ってしまった為に低賃金で人を雇うことが出来ました。本来、雇う側が普通に生活できるだけの給料を支払わなければ人を雇う事など出来ないはずなのです。ところが、給料が十分ではなくても「とにかく収入を得るため」に人は働かなくてはならないのです。少なくなった働き口の取り合いです。働き口が減ってしまっても 働かなくてはならない人の数は そう簡単に減らないのです。給料に不満があっても しがみ付いておかないと次の働き口は無いかもしれないのです。そう言ったことが低賃金で人を雇うことを可能にしていたのだと思うのです。


大企業やお金持ちの姿勢も問題です

 大企業やお金持ちがお金を抱えたままでいると世間に流れているお金の量は減って行くのです。また、お金は海外にも流れて行っているのです(関連)。大企業は部品の製造や発注先を海外に移しています。いえ、製品すら海外で生産されています。それらの工賃は海外に流れてしまっているのです。
 「お金持ちなんてそんなに居ないだろう?」。いえ、ちょっとした小金持ちという人は案外いるかもしれないのです。だってその証拠に街では高級な外国車をよく見かけるし、タワーマンションなんていうのも結構 建設されているそうじゃ無いですか。
どうやってお金持ちになったのかは知らないけど………。
 何が問題かと言うと日本の中のお金の流通量が減っていくのです。お金の絶対量というのは決まっているのです。流通量が少ないからと言って日銀がお金を増やす事は出来ないのです。インフレを起こすことになりますから。昔、学校で習いました。
 お金の絶対量が決まっているのに海外に流れて行ったり、滞っていたりすると世間に流通しているお金が少なくなるのです。社会は その流通量の減ったお金をやり取りして活動しているのです。そして、お金は動けば動くほど また、大企業やお金持ちへと流れて行くのです。


所得100倍のお金持ちが10世帯あるよりも

 通常の世帯が1000世帯ある方が景気には絶対 プラスです。その方が車も家電も100倍売れますからね。100倍の所得があるからといってビデオレコーダーなんて100台も買わないでしょう? 2台、3台と買えば贅沢な方。でも普通の所得の世帯が1000世帯あれば間違いなく1000台売れます。でも、生活ギリギリの世帯ではビデオレコーターも買えないかもしれない。


経済を支えているのは普通の人です

 企業でありません。普通の人が商品を買うから経済は回っているのです人々が物を買う元手は給料です。給料を払ってくれるから企業が大事なのです。今の不景気は働き口が必要だからと言って 企業を優遇した結果です。企業が社会を支えてくれるならそれもいいでしょう。でも、本当に社会を支えているのは消費者です、普通の人々です。普通に働く人々の給料が減らされてしまうのなら 企業を大事にしても意味がないのです。
 僕は思うのです。企業が自社の利益を最大化するために効率化を進め 自社の為に働いてくれた人(部品を納入してくれる企業の人も含めて)を犠牲にしていたから日本全体が活力を失ったのだと思うのです。



2017/02/24



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