物価目標が達成されない理由


 バイクというものはハンドルを右に切ったら左に曲がるものなんだそうです。 (BS11 「MOTO RISE vol.177・バイクレッスン」より。あと、かなり以前にタレントの清水邦明さんもおっしゃていましたね。) 「えっ、何を言っているの? それと経済と何の関係があるの? そもそも、ハンドルを右に切っているのに左に曲がるわけないだろう。」とおっしゃられるかもしれませんが まあ、僕の話を聞いて下さい。
 クルマならハンドルを右に切れば右に曲がります。ところがバイクで、ただ 単にハンドルを右に切るだけだと左に曲がって行ってしまうのだそうです。 つまり、ただ単にハンドルを右に切るだけだと前輪の接地面だけが右に移動します。重心は慣性の法則に従って移動しないので 相対的に車体の左側に移動してしまいます。当然、車体はに傾きます。するとハンドルは左に切れ込んでバイクは左に曲がって行ってしまうということです。自転車が手放しでも運転できるのと同じ原理です。(アッ、自転車の手放し運転はいけませんよ。念のため...)
 つまり、右に曲がりたければ、あらかじめ(あるいは同時に)重心を右に移動させ、車体を傾けて、ハンドルを右に切っても大丈夫な体制を作ってから (いくつか方法があるのだそうです。)ハンドルを右に切るのだそうです。
 ここからが本題です。


消費者物価なんて上げようとして上げられるものでは無いんじゃないですか?

 いくら政府が大企業に働きかけて希望小売価格やメーカー出荷価格をつり上げたところで消費者物価は上がらないのです。 「商品の値段が上がれば消費者物価は、当然 上がるだろう。」いえいえ、商品の値段が上がるのが許容されるのは消費者にその支払い能力があるときに限ります。それがなければ、その商品が買われなくなってしまうだけです。
 値上がり前の段階で生活に必要なギリギリの収入しか得られていなければ、その人は商品を買わないか、血眼になって安売りの店を探すだけです。そして、どちらも出来なければ首を括る事になります。
 商品が売れなくなると小売のお店も困るので無理してでも小売価格を維持する事になります。それが消費者物価が上がらない理由です(だと思います)
 人々の収入を上げずに消費者物価をつり上げようとするのは、バイクで体制を作らずにハンドルを切るようなものです。 消費者物価を上げたければ上がっても大丈夫な体制を作らなきゃいけないんですよ。


物価が上がることが許容される社会を作るためには……

普通に働く人たちの収入を上げなければならないのです。大企業で働く人たちだけではなく……。
 「だから、政府は最低時給を上げようとしているじゃないか!!」いえいえ、それだけでは規模の小さな下請け企業で働く人たちの給料は上がらないのです。会社で働く人たちの給料を上げるためにはその会社の売り上げが上がらないといけないのです。
 そもそも、800円の時給が900円になったから如何だと言うのです。物価上昇を許容する社会を作るためには、パート扱いでもフルタイムで働いている人の時給は何倍にもしないと……
 いやー、でもそれをすると消費者物価の上昇は2%どころか2倍とか3倍になったりして……

 十分に利益の上がっている大企業なら社員さんの給料を上げることは簡単でしょうが、上位企業の圧力に逆らえずギリギリのところでやっている企業が社員さんの給料を上げなければならないとなると企業存続の問題です。売り上げが上がらないのに人件費は増えてしまいます。
 普通の人たちの収入を上げるにはそれが出来る体制を作らなきゃいけないんです。そのためには大企業に下請け企業の労働に対する正当な対価の支払いをしてもらわないといけないんです。 いつまでも「大企業さえ存続させれ大丈夫。」じゃダメなんです。いくら大企業を存続させてもそこの商品を買ってくれる人がいなくなったら無意味です。下請け企業で働く人たちも巡り巡ってお客様です
 企業は人に働く場を提供し、部品、資材を納める企業に商品代金を支払ってくれるから大事なんです。それを渋る企業を人々に犠牲を強いて企業を維持しようとする (法人税の減税、主たる財源の消費税への転換)のは無意味です。 法人税が減税されたのなら ちゃんと納入業者さんに支払いをしなさい!! そうしないと日本の経済、財政は崩壊します。いくら財源を消費税に転換したところで人々が物を買う元手は給料なのですから…… どちらも嫌なら日本に留まってもらわなくてもいいです。労働者を蔑ろにして食いつぶす様な企業を日本に繋ぎ止めたところで日本の経済には寄与しません。


“お偉い方々”は何故、消費者物価が上がらないか解っていらっしゃらない

 そして、頭が硬い。消費者物価の2%上昇という目標を立ていましたが、一向に達成されなくて「先送り」「先送り」の連続でした。そして、ついに期限を定めないとまで言ってしまいました。そんなのなら いっそ引っ込めてしまえばいいのにね……
 思い通りにならないなら「ナゼか?」って考えないですか? それを自分たちのやり方に固執して直接的に商品の値段を上げる事にばかり拘られている。「ネェ、収入も上がらないのに生活に必要な物の値段が上がったら首を括るしかないんですよ。」


何故、消費者物価を上げる事に拘られているかは解る様な気がしますね

 きっと、何処かのシンクタンクの様なところから「消費者物価を2%上げる事が出来れば財政改善が出来る。」と言う報告があったのでしょう。
 しかし、「上げる事が出来れば」です。「つり上げれば」ではありません。「消費者物価なんて直接的に商品の値段を上げてしまえば簡単に上げられるだろう。」と短絡的に考えらたのでしょう (あっ、あくまで僕の妄想です。) 
 実際は如何だったか? 一向に上がらない消費者物価が現実の事態を示しています。


物価を上げることが本当に良いことなのか僕には判りません

 消費者物価が上がれば人々が必要とする収入も増加します。そうなると、日本で製造する製品は全体に値上げせざるを得ません。為替相場が現在のまま維持されると、相対的な円高となりますね。 海外への輸出は厳しくなります。せっかく円安に振ったのに……。為替介入で 更なる円安? そんなの出来るの? 輸入国への転換? 国内の農業生産は壊滅? なんか、グチャグチャだね。
 財政改善に集中するあまり、それが別の問題を発生させかねないことに気が回っていないんじゃないでしょうかね?  “お偉い方々”が考えられているほど世の中は単純じゃなくて、色々な事柄が複雑に絡み合っていて、ちょっとした政策が思わぬところに副作用を及ぼすかもしれません。
 経済って鈍重な物だと思います。今の政策が20年後、30年後にとんでもない事態を引き起こすかもしれません。その時、二進も三進もいかない事態になっていない事を祈ります。



2018/06/28
2018/07/07 小変更、間違い訂正



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