メガバンクの理論で地方銀行が評価されてはたまらない
僕のメインバンク……と言う程 預金はないですね……。働き始めた頃から口座を持っている “ある地方銀行”は経営状態が良くないのだそうです。経営の合理化、効率化が必要だとの記事が新聞に掲載された事があります。
1支店あたりの収益額だとか、預金額とか
数字で表せるもので評価するとそう言った結論になるんでしょうね。
しかしです、メガバンクの理論で “この地方銀行”が経営の合理化を進められたら、僕の住む県では「困ったことになったな。」と言われる方が大勢出ると思います。
メガバンクの支店なんて近くに無い
え~、僕の住んでいる“市”にはメガバンクの支店なんて有りません。県内でも支店があるのは人口の多い いくつかの“市”、あるいは大きなターミナル駅のある“町”にしかありません。都市銀行でも似たようなものです。
(訂正 : 駅前に大手の銀行の支店がありました。最近 あまり電車利用しないし…… あまり利用しない向こう側の駅前だし……)
僕の家からだと、電車に乗って2つ向こうの駅近くにあるのが一番近くでしょうか。
(いえ、そこへクルマで行くには、昔からの狭い道が渋滞して面倒なんです。)
しかし、“この地方銀行”の支店 は歩いて行ける距離にあります。「歩いて1時間以内」まで範囲を広げれば数店舗あります。
(実際に歩いては行きませんけど、“この地方銀行”のきめ細かく開設された支店の数の多さを実感してもらうために書いておきます。)
僕の住む県には山深い地域もあって……
一番 山奥からメガバンクの支店まで出向こうとすると 1日がかりなんてことも……。帰りのバスに乗り遅れたら大変です。山奥に向かう便の最終が「午後3時」なんてこともあり得ますからね。
(そこまで言うのはオーバーかな )
「お金なんてコンビニATMで下ろせばいいだろう。」と言われそうですが、コンビニなんてネ、山の地域には そんなには無いんですよ。
(今、調べました。大手コンビニ チェーンのお店は、山の地域には1店舗もありませんでした。)
それに「ATMなんて使い方が解らない。」と言われるお年寄りも沢山いらっしゃると思います。
そんな山奥でも“この地方銀行”の支店は有るんですね~。手厚いコト。
もし、メガバンクの理論で……
効率化が進められたら、支店は相当数 閉鎖されるでしょうね。僕の住む“市”から “この地方銀行”の支店が無くなるなんて事もあり得ます。それでいいんでしょうかね。
僕はいいですよ、少し遠くてもクルマでいけますし、コンビニATMも利用しますしね。しかし、お年寄りだけで暮らされている場合、お金の出し入れのために2000円とか、3000円とか払ってタクシーで行かなきゃいけないなんて事になりかねないんです。
田舎とはいえ “市”と名乗れる程の所でこんな状況ですから、山にある“村”だと なお大変です。
銀行って預けるとか、借りるばっかりじゃないですよね
給料や年金を受け取るとか、あるいは公共料金の支払いとか……。金融機関って経済インフラとしての役割もあると思うんです。
僕も “この地方銀行”で自動車税なんかの納税をしますし、公共料金の引き落としもこの銀行です。
山の地域でお金を引き出したり、何かの支払いをしようとしたら「郵便局」「JAバンク」「この地方銀行」
しかないんです。それを非効率だと支店が閉鎖されてしまったら、この地域のお年寄りは年金を手元に持ってくる手段がなくなりますね。
郵便局なら“一つの村に一つ”位は ありますけど、今や郵便局も いち私企業にすぎませんからね、「非効率だ。」と 取り扱いの少ない郵便局が廃止されたらどうなるでしょうね。
キャッシュレス社会になれば問題ない……
と 言われるかもしれませんが本当にそうでしょうかね? そういう人ってお金っていうモノを大企業の視点でしか捉えていらっしゃらないんじゃないですか? 「個人の間でのお金のやり取りをどうするか?」って事を考えていらっしゃらない。
売り上げが1日数十万と言う様な大店舗なら 警備員をつけてお金を移動させるより、手数料を負担してでもキャッシュレスの方がありがたいのかもしれませんが
(しかも、“仕入れ”と“売上げ”は別の部署で管理されているし……)、売り上げが1日 数千円なんていう小さなお店
(個人商店)なら、その度、手数料〇〇%を取られるより売上金を そのまま仕入れの支払いに回せる現金の方が よっぽど使い勝手が良いかもしれない と思うのです。日本は安全な国ですからね。
今、ふと思ったんですけど、本当にキャッシュレス社会になったら「町内会
(自治会)の会費」はどうしたらいいのでしょうね? 毎年、町内会の集会に出席するんですけど その時、町内会の会費を集めるんです。
一軒あたり、数千円の年会費を年一回 集めるためだけに「町内会で入金する機械を購入する。」なんて無駄ですしね。現金で受け渡しをすれば簡単で、受け取りの確認も簡単で確実なんですけどね…… えっと、話を元に戻して……
これを書いている最中に……
安倍首相から地方銀行やバス会社の経営改善のために、統合が必要だと言う見解が示されました。それで統合で経営が改善されるでしょうか? 僕にはそう思えません。
首相は一体どういう お考えで統合すれば経営が改善されると おっしゃられたのでしょうね? もしかしたら ご自身がお住いの周辺、東京の中心地で、同じ通りに違う銀行の支店が沢山あるような状況を想定されて、経営統合すれば経営が改善されると考えられたのではないでしょうか。
手抜きの安心感ですね。「都会の企業が成功した方法をそのまま持ち込む」 と言うのが“手抜き”で、「その企業は業績を改善されている」 と 言う成功例が“安心感”。
しかし、都会の銀行と地方銀行では、前提条件も、業績低下の原因も違うのです。
都会の企業の成功例を地方の企業に 本当にどう持ち込むのか? と 想像してみる事をしていらっしゃらないように思います。
東京を基準に考えるから、地方の企業が「業績が悪い」となるのです。東京での成功法を実行できる都市が いったい日本にどれ位あると言うのです。東京と地方都市では人口密度、企業数、都市の規模が違いすぎます。そして、あらゆるコトが まず、「東京」から実施されます。
そんなところでの成功法が地方で有効な訳ないじゃないですか。地方が基準で、東京やその他 大都市だけが“特別 儲けを出しやすい所”と考える事ですね。
効率化が経済の全ての問題を解決するというのは幻想です
経営の合理化なんて 結局、負担の大きい部分を切り捨てるか、集約するかのどちらかでしょ。
(……大胆な発言だ……)
特定の地域の中に重複して別の銀行の支店があるなら 経営統合すれば支店の数を減らす事で負担を軽くする事ができますが、山の地域では“重複している支店の統合”なんて出来ません。 ……もともと重複してないですからね。
僕の住む県の山の地域には“この地方銀行”しかありません。信用金庫もない……
と、なったら できる合理化とは支店を集約する—— つまり数を減らすしかないでしょ。しかしそれは 一つの支店の受け持つ地域が広がってしまうと言う事です。都会の人では想像もつかないほどに……
「自宅から最寄りの銀行まで 遠くなってしまった。もう行くことはできない。」と おっしゃられる方が相当出ることでしょう。
地方銀行が経営状態が良くないとされるのは……
きめ細かく開設された沢山の支店の経費が重くのしかかるからでしょう。統合したところで、儲けに対して経費が大きくかかってしまう“村の支店”の負担が 統合された新たな会社に移るだけです。
それは 単に“会社全体の利益”という分母を大きくして、“村の支店を維持するための経費”の割合を薄めて、見せかけの経営状態が改善されるだけです。
いくら経営統合されようが“人口の少ない村の支店”の運営状況、つまり“利益に対する経費の比率”は変わり様がありません。
新たな会社の経営陣が負担を嫌がれば“村”の支店は閉鎖されてしまいます。もしかしたら、山の地域から支店がなくなってしまうかもしれません。
合理化、効率化を推し進めると言うのは……
重複してる物をまとめてしまうと言う事です。しかしそれでは、
現在そこで収入を得ていらっしゃる方が職を失うと言う事も起こります。
「
消費者は労働者で、労働者は消費者です。」 利益
率は高められても、“パイの大きさ
(経済キャパシティ)”は小さくなってしまいます。
決して 効率化が悪い訳ではありません。元から効率化されていれば何の問題もないのです。一度、効率を無視して規模を広げた後、より儲けを増やそうと強引に効率化を進める事が問題なのです。
今、企業が進めようとしている効率化のペースに 人々の人生サイクルがついて行けないのです。
生きていくのに必要な給料が得られる就職先がないからと言って生きていくのを止める訳にはいかないのです。
地方銀行の存在意義
僕はシロートにしか過ぎないので経営の云々なんて全然わかりませんけど、たとえ非効率でも、メガバンクが入ってこない所に踏み込んでこそ、地方銀行の価値があるというものなんじゃないですか?
地方銀行はメガバンクが地方銀行はメガバンクが取り扱う事を嫌う、小さな利益を積み上げて営業されているのではないでしょうか? それは、メガバンクでは相手にされない融資にも真剣に対応されることもあるでしょうし、また、その地域特有の事情とかを汲み取って商機に繋げることも出来るのでしょう。
そのために 人口の少ない“村”にも支店を構えていられるのだと思います。
会社としての規模が大きくなれば 小さな利益など切り捨てても会社を運営する事が出来るようになります。
一般論とか、
経営論とかに支配されて、“合理化”、“効率化”の名の下、利益率の低い支店なんてすぐに閉鎖されてしまうでしょうね。
合理化を突き詰めていくと 結局、メガバンクと同じ所にしか支店は置かれないでしょうね。そうなったら 地方銀行なんて必要なくなるんじゃないですか?
地方銀行がメガバンクと競合したら勝ち目はないですね
体力、つまり動員できる経費が違いすぎます。その体力の強大な銀行に“一番オイシイ” つまり、高い利益率の期待できる場所で競合したら 地方銀行の経営が苦しくなるのは当然じゃないですか。
直接的な政府、あるいは地方自治体からの支援を「ダメだ。」と言いながら、経済力の弱い地方で、地方銀行の経営状態を「経済力の豊かな地域と同じレベルにしなさい」と言うのなら、たぶん、メガバンク、都市銀行の出店数を制限するしかないんじゃないですか。
(それは 間接的な支援にあたるか……)
バスの路線も……
経営統合したからと言って如何なると言うのです。地方のバス会社を統合したからと言って、個別の路線の沿線に住まわれている方の数が増える訳でナシ……
複数のバス会社が競合しているなら統合により路線を整理できるかもしれませんが、田舎の路線なんて他社と競合していません、むしろ バスだけ
(......当然、鉄道はありません……)で生活するには足りないくらいです。
たまたま、住んでいる所の近くにバス路線があれば利用できるだけのコトです。
考えても見てくださいお年寄りがバス亭まで10kmも歩いて行かれると思いますか?
(いや、「バスの路線まで」と言うべきか? バス停でなくても止まってもらえる“自由乗降バス”という路線も山の地域では多いですからね。) 山の地域のバスの路線網なんてそんな物なのですよ。しかも、便数も少ないし……
(村営のコミュニティ バスが近くまで来るのなら ラッキー...)
だから、田舎ではクルマが必需品なんです。
首相はきっと、東京の様な複数のバス会社がきめ細かく路線を張り巡らしている状況を想定して統合すれば経営が改善されると考えていらっしゃるのでしょうネ。
統合されたバス会社が 山の路線の単独での赤字に目を瞑って運行して下さるのなら話は別ですけどね。
地方経済の活性化と言うのなら……
たとえ非効率でも、“経済インフラ”、“交通インフラ”と言った最低限の“社会インフラ”は維持することですね。たとえ国の予算を使う事になっても…… あっ、きっと “最低限の社会インフラ”と言うモノは時代によって変わっていくモノなのでしょう……
銀行の規模を大きくしても、メガバンクに負担をお願いしても、人口の少ない地域の支店の利益率は変えようがありません。支店を統合すれば利益率は改善できますが、利用できる人は減ってしまいます。
効率だけを求めると地方の経済なんて成り立たなくなります。地方の経済が成り立たなくなったら、日本全体の消費も現在より抑えられたものになるでしょうね。都会だけがモノを消費している訳ではありませんから……
……むしろ、田舎の方が消費の率は高いかもしれない
……知ランけど……
単純に考えても田舎では車と言うモノは「一人に一台」に近いレベルですからね、それが失われてしまいます。自動車の販売台数は相当に減ることでしょうね。自動車会社の収益は下がり そこに何かしらを納入されている企業も影響をうけ やがて家電メーカーの業績も低下すると……
世の中 回り持ちです。
それでいいと言うなら僕には何も言えませんけどね。田舎では既に経済は縮小しているから案外 影響は少ないかもしれない。
効率化は 進めれば進めるほど
経済キャパシティーを縮小させます。今、考え方を変えないと「これ以上 縮小できない 」と なるまでは縮小は続く事でしょうね。そこに行き着くまでは ずっと不景気が続くのです。そこに行きついた時、 日本の経済は いったい どれ位の規模を維持できているでしょう。
2018/12/10
その後に思ったこと
僕が最初に“この地方銀行”に口座を作ったのは 単に一番近くに支店があったからです。
当時、ATMなんてよっぽどの場所じゃないとありませんでしたから仕事を休まないとお金を下ろすことすら出来なかったんです。
母親に銀行の営業時間内に行ってもらおうとすると、「歩いて
(あるいは自転車で)行ける距離」である必要があったのです。
大手の銀行には電車でないと行けませんでした。
それに地方銀行にとって 負担の大きい沢山の支店こそが、実は生命線なのかもしれません。
大手銀行が撤退した、あるいは元々入って来ていなかった地域に支店を構えていれば、その地域の方の多くはその支店で口座を作られることでしょう。銀行は……、特に生活に使う銀行は生活圏にないと……
ネ。
「残存者利益」という言葉を聴いたことがあります。例えば家電とかである種の商品のブームが起きると新たな市場を求めて多くの企業が参入してきます。
しかし、ブームが落ち着くと消耗戦になって、一社、また一社と撤退する企業が出てくる。そして、最後まで残った少数の企業がその市場を分け合う。
“この地方銀行”は
残存者ではありませんが、山の地域 唯一の通常銀行
(つまり ゆうちょ銀行、JAバンクを除く)です。
それなのに、大手銀行の基準で“効率的でない”とそれらの支店を閉鎖してしまったら余計に経営が苦しくならないですか? 大手と競合する支店しか残らないんですから。
「
利益率は低くても確実にお客様を見込める支店」と「
利益率は高いけど常にお客様の流出を心配しなければならない支店」どちらがいいですか?
余談ですが、“この山の地域”にお住いの方は、山を向こう側に下った隣の県の銀行を利用されているかもしれませんね。その方が ずっと近い筈ですから。
2018/12/23 追加