フォノ・カートリッジについての考え方

オーディオに於いて、振動変換系(トランスデューサ)はマイクとスピーカー、そしてフォノ・カートリッジになると思いますが、この3点すべて原理は同じ物です。現在マイクはコンデンサー型、スピーカーはダイナミック・コーン型、そしてカートリッジはムービング・コイル(MC)型が主流に成っていますが。もちろんいずれの形式の物も製作可能です。現在提示の表のような種類の物が実用化されています。そしてそれぞれいろいろな要素が重なって現況があるのですが、最大要因は経済性にあるのは間違いないところです。

その中でフォノ・カートリッジをみますと、昔のサウンド・ボックスと構造は同じような物です。振動板がそのまま空気振動になる代わりに、電気変化に変換し、微弱信号を電気増幅して振動板(スピーカ)にて空気振動に変わるだけのことです。

したがって、針とカンチレバーと発電機構の組み合わせ、それとそれらを収納するケースに分かれます。

針先は、昔は鉄や竹・サボテン・ガラス・陶器等・針その物でしたが、そのうちサファイア、ルビー、ダイヤモンドと云った宝石が主流になり、現在では最大硬度の、ダイヤモンドに集約されるようになりました。

曲径も3mil中心が、LP等のマイクログルーヴ(微細な音溝)になり、0.7mil0.5mil丸針から、楕円針、ファインライン始め各種名称の超楕円針、シバタ針等ライン・コンタクト・特殊楕円針を経て、マイクロ・リッジ針に至る現在の様相ですが、いずれも三角錐形のカッター針に近く、溝をカットしない矛盾した要求を実現しようとした結果がもたらしたものです。

カンチレバーは鉄・アルミから、ジュラルミンチタン、マグネシューム、カーボン、グラス・ファイバー、ルビーサファイアダイヤモンド、そしてベリリウムを経てボロンまで、各種素材が実用化されましたが、現在いちばん多いのが、505アルミニウム合金を使用した物のようです。

発電機構は流行もありますが、増幅機の進歩で微弱でも粗製の良い物が好まれ、このところ空芯コイルのMC型が、採算性の良さから主流になり、やたら高額な手作り品が主流のようですが、ご自身で価値を判断されるべきと思います。いずれにしても振動変換系で一番近いマイクが、プロ用ではコンデンサー型が各種多用されているように、絶対の物ではありません。

用途、趣味等諸々の要素を加味し、お決めになるのが先決ですが、MC型に於いても最近マグネットが急速に進歩し、従来のアルニコフェライトと云った鋳造磁石に変わり、磁束密度や抗磁力にも優れた希土類系マグネットの、サマリュウム・コバルト、白金・コバルト、分けてもネオジウム・マグネットの出現で、従来の形状に捕らわれない形の物、性能の物も出てきました。最新のカートリッジの価格は、開発費がすべてだとご認識の上、ご使用いただければと思います。

ケースは、金属など剛性の強い物が好まれますが、わざと無くした物など、意図が伝わる物ならそれで良いと思います。このあたりも趣味の物です。

個人的には、マイクロ・リッジ針で、ベリリウムが無理(製造過程の公害問題)ならボロンカンチレバーで、空芯コイルにネオジウム・マグネットの大きな物を使用し、出力も大きな物が出来ればと思っていますが。

一度でもお作りになった方はお分かりと思いますが、これほど微妙な物は他に無いと思えるほど、特性も性能も音質も大きく変化しますので、素人がたやすく口出しできる物ではありません。開発費を購入するのだと肝に銘じるべきしろ物です。

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蓄音機のサウンド・ボックス(リプロデューサー)

右側の写真は191020年代アメリカで、製作されたと思われるコロムビア製蓄音機です。

右にあるハンドルを回し、ゼンマイの巻き上げの動力で、約4分指定の回転数でわりと正確に動きます。もちろん正真正銘のダイレクトドライブです。ラッパも当時のままで、今ではかなり貴重な品です。

サウンド・ボックスの振動板(ダイアフラム)は「雲母」です。針は四角な小箱に入った釘先の様な鉄針です。SP盤は25cmですので、大きさ比較してください。演奏時間は片面3分弱です。

左側にあるのは、大人の科学でありました、サウンド・ボックスを利用した、自作の蓄音機風のおもちゃで すが、別にT4Pタイプのアームも付いていますので、LPもSPもカートリッジ交換で使用できます。サウンド・ボックスは、プラスチックの振動板ですが構 造は一緒で、この方が分かりやすいと思います。針は共通で使えます。モーターはリム・ドライブの4スピードで電動に成りますので巻く必要はありません。デ ンチクと称した電気蓄音機は、この様な物にスピーカーとアンプが、一体で詰め込まれていました。

ご覧のようにサウンド・ボックスと、フォノ・カートリッジ動作も形状も非常によく似ています。サウンド・ボックスが、音溝の振幅を空気振動に変換するのに対し、フォノ・カートリッジは、電気信号に変換するのが異なるだけです。

が、実はサウンド・ボックスは、もっと前にはマイクロフォンとしても使われていました。ラッパに向かって大声や大音響を入れると、針先が動いて溝に傷を付けるのです。

これは、カッテイング・ヘッドその物です。そうです、今はそこに電気増幅が介在するのです。

実を言いますと、大人の科学はこれの実験用の物でした。

 

実物を見たことも聴いたこともありませんが、溝にレーザー光を当て、その反射を読んで音信号に変える、レコードプレーヤがあるそうです。確かにできそうですが、元々アナログ・ディスクは前項の可逆動作を利用したものです。CDプレーヤにヒントを得て、考案したのでしょうが、どれだけの意味と効能があるのでしょうか?

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