WISC-Vの検査
−たとえばY児の場合−
検査結果から1
ここでは、WISC−Vの結果だけから、どのようにして子ども像を描いていくのか、その手順をまとめていきます。
Y児にWISC−Vの検査をしたとします。
言語性下位検査の結果は、
知識 類似 算数 単語 理解 数唱 評価点 13 13 12 10 8 12
動作性下位検査の結果は、
絵画完成 符号 絵画配列 積木模様 組合せ 記号探し 評価点 11 8 6 4 7 8
と出てきました。
○評価点をグラフにあらわします。
評価点を検査用紙にあるグラフに表すと、Y児の能力のばらつきを見ることができます。
ここでは、検査用紙とはちがうあらわし方をしてみます。
言語性下位検査の評価点のばらつきは、
のようになります。
動作性下位検査のばらつきは、
のようになります。
このばらつきをもう少し詳しく見てみましょう。
そのために、評価点の平均を計算します。
言語性下位検査の評価点合計は68で、評価点平均は11.3になります。
動作性下位検査の評価点合計は44で、評価点平均は7.3になります。
○下位検査の評価点と評価点平均と比べます。
次の三つのものさしを使って比べます。
一つ目は、評価点平均と3点以上はなれている場合、その検査の評価点には意味がある
二つ目は、評価点平均から1点以内であれば、その検査の評価点は平均域にある
三つ目は、評価点平均点から1から3点はなれている場合、その検査の評価点はやや意味がある
一つひとつの下位検査からは、固有の能力が判定できます。
下位検査の評価点に意味があるということは、そこから判定できる能力にも意味があると考えます。
このものさしで、言語性下位検査の評価点と評価点平均を比べると
有意に高い やや高い 平均 やや低い 有意に低い 知識、類似、 算数、数唱 単語 理解
動作性下位検査の評価点と評価点平均を比べると
有意に高い やや高い 平均 やや低い 有意に低い 絵画完成 符号、組合せ、
記号探し絵画配列 積木模様
となります。
この表は、Y児の学習能力のならびになるのです。
言語性下位検査の表は、言語性能力をあらわし、動作性下位検査の表は動作性能力をあらわしています。
○Y児の像を描いてみる。
以上の表とグラフから具体的にY児の像を描いてみましょう。
@評価点平均は言語性下位検査の方が高いことから、動作性能力より、言語性能力
が高いのではないか。
理解力、表現力は、平均より高い域にあるのではないか。
しかし、Y児個人の能力の中では、長い表現より短い表現の方が理解しやすく、表現
しやすいのではないか。
A単語や理解が低く、知識や類似が高いことから、単語に関する知識、社会的な常
識よりも一般的な事実に対する知識の方が豊富なのではないか。
B積木模様が低く、絵画完成が高いことから、モデルを再構成するのは苦手だが、自
分のイメージしたことを再構成するのは得意なのではないか。
Y児が1年生の子どもであるなら、ひらがな文字や漢字を習得しているか心配です。
モデルを示されても、それを使って同じような問題を解くことは苦手ではないか。
もしかしたら、授業中の先生の指示や説明、質問を聞きもらしていることもあるかもし
れません。
C絵画配列が低いことから、時間的な順序を理解するのが苦手なのではないか。
学校の生活の流れのなかで、今は何をするときなのか、理解して行動できているだ
ろうか。
D算数や数唱、符号や記号探しが平均にあるが、言語性下位検査の評価点平均の
方が高いことから、視覚記憶よりも聴覚記憶が得意なのではないか。
・・・
疑問形の表現になりましたが、これでいいのです。
親御さんから聴き取れば、はっきりするのですから・・・。
もう少し検査結果を見ていけば、はっきりするのですから・・・。
検査結果から2 検査結果から3