井上刃物 研ぎ専門店

井上刃物
 

 

他のところでも何度となく出てきていますが、
サビとは金属が腐食することによって、その部分が脆くなってしまうことです。
ここでは、当店が研ぎ屋としてどの程度、対処しているのかを記します。
もちろん、取り除けないサビや、致命的なサビがあることも知って頂けたら、と思っています。

 

 薄い錆


刈込鋏 三徳庖丁

サビが回っていますが、濃い茶色ではなく、
指先で触れても、あまり違和感はありません。

塩分水分を含んだまま、刃物を放置すると、高確率でサビてしまいます。
ただし、短期間だと表面上がサビているだけですので、取り除けばサビる前と変わりません。
サビさせないことが第一条件ですが、すぐに取り除くことが出来れば問題ありません。

 

 深い錆


牛刀 鉈 

濃い茶色をしていて、サビが成長するように膨らんでいます。
その為、触るとザラザラしています。

表面上に出来たサビが、浸食してしまった状態のものです。
サビ始めた刃物を、長期間放置することによって起こります。
刃物の形状や状態によって頻度はありますが、取り除くことが出来ても、サビた部分が多かった為、削られたような跡が残ってしまいます。

 

 


三徳庖丁(ステンレス) 出刃包丁

黒い粒のようなものが巣です。
左の写真は出刃包丁の裏側で、黒く凹んでいる部分や、
先端の黒い点がそれにあたります。

巣という言葉は、当店が便宜上、呼んでいる言葉です。
鉄や鋼が、サビの浸食によって貫通している状態のことで、取り除くことは出来ません。
その部分が先端までくると、サビの度合いによって大きさは異なりますが、脆くなっている為に、カケとなって表れてしまいます。

 

 使用限度

お客様の中には、
サビてしまうともう使えない、と思われている方がいらっしゃいます。
端的に答えますと、深いサビがある刃物でも、
極度に酷い状態でなければお使いして頂くことが出来ます
ただし、鋼にサビが浸透していたり、巣が出来ている場合、その部分が脆くなっているので、
カケ易かったり、切れ味が通常よりも落ちてしまっています。
その点を承知して頂ければ、新品とは違いますが、問題はありません。

 

 実例

言葉だけでは伝わり難いと思いますし、説得力もありませんので、
実際に当店へ持ち込まれた、
サビた刃物がどのようになるのかを、見て頂こうと思います。
かなり酷い状態のものでしたので、【磨き】の事例と同様に、
その変化をわかって頂けると思います。


 花鋏



 磨き前

こちらは、屋外に放置されていた花鋏です。
長期間、雨風に晒されていたようで、浸食したサビが全体に回り、癒着するように固まって、刃を開くことが出来ませんでした。
ちなみに当店に持ち込まれる中で、もっとも酷い状態のものに当たり、以前と同様に使用出来るようになるのかは、実際に研ぎ出してみなければわかりません。



 磨き前

別物のように見えますが、同じ花鋏です。
サビを取り除くように研ぎ上げ、磨きを掛けてから仕上げました。
開閉が可能になり、新品のように見えますが、表の刃以外にはサビによるダメージがあります。
特に裏側は片刃で鋼が剥き出しですので、サビが深かったり巣が出来ていると、それを取り除くことが出来ません。
理由は限度があるからで、研ぎ出していく過程で、刃物としての機能を失ってしまうからです。


 菜切包丁



 研ぎ前

こちらは地金と鋼で作られている、黒打ちの菜切庖丁です。
地金の平の部分(刃が付いている傾斜ではない部分)に防錆処理が施されていたのですが、メンテナンスをせずに保管されていた為、サビが回ってしまい、さらに放置された結果、浸食されて深いサビとなっています。
黒打ちの場合、防錆処理が施されている部分には通常、磨きを掛けないのですが、サビによって機能を果たしていないので、取り除くことにしました。



 研ぎ後

研ぎ出した後、磨きを掛けました。
光の加減によって見え方が違いますが、全体的に銀色になっています。
両刃で、さらに見た目ほど酷くなかったので、刃先と切り刃の部分のサビは取り除けました。
巣も出来ていないので、この状態を維持すれば、購入されたときと変わらない性能を、発揮することが出来ます。
防錆処理が施されていた部分に残っている、黒い個所や粒は、サビによる浸食の名残です。


 剪定芽切鋏



 磨き前

ご使用後、メンテナンスをされずに放置されていたようです。
推測になりますが、使用中に開閉時に必要なバネがなくなってしまったことにより、使えなくなったとご判断されたようです。
状態としては全体的にサビていて、ネジの部分も腐食して、完璧に開くことが出来なくなっています。
この程度なら刃の表側は問題ありませんが、裏側がどのようになっているのかは、研ぎ出してみないと判断が付きません。



 磨き前

研ぎ上げて磨きを掛け、当店に常備してあるバネを付けました。
ネジの部分は以前のものですが、取れなかったり使用出来る状態でなければ、バネと同じように取り換えます。
見た目では花鋏よりも酷くありませんでしたが、難しいもので、裏側には巣が沢山の巣が出来ていました。
右下の写真の、黒い粒のようなものがそれです。
使用に関してはほとんど問題はありませんが、正規の状態よりも、性能は落ちてしまっています。

 

 最後に

ご使用によってカケてしまったり、研ぎによって丸くなったり、歪んだり、
またサビてしまったりなど、
使えなくなったと判断して買い換えられる方が多くいらっしゃいます。
再び使用出来る刃物は、以外と多くありますし、
思い入れがある大切な刃物なら尚更です。
まだお手本にあられますなら、一度、お探しになってみて下さい。

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